相続が発生し遺産を分割する際、分割協議を行います。しかし、1人でも相続人の居場所が不明な場合や連絡が取れないケースなどは、この分割協議をすすめることができません。
では、相続人が行方不明の場合、遺産分割はどのように行えば良いのでしょうか。
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遺産相続で相続人が行方不明の際に相続人を探すときのポイント
遺産相続の際に、相続人が行方不明の場合は遺産相続ができません。その理由は、遺産分割協議に相続人全員が参加する必要があるためです。
では、相続人が行方不明の場合はどうすれば良いのでしょうか?
まずは、行方不明の方を探す必要があります。
ここでは行方不明の相続人を探す方法や費用について説明していきます。
行方不明の相続人を探す方法
行方不明の相続人を探す方法は主に以下の方法があります。
捜索方法 | 内容 | 依頼場所 |
戸籍附票を確認して探す | 今までの引っ越し履歴が分かる | 行方不明の人の本籍地のある自治体で発行してもらう |
警察に捜索願を提出する | 事件性のある場合は捜索してくれる(ない場合はパトロール時などたまたま見つけた場合に連絡してもらえる) | 警察署で書類を提出 |
SNSなどを利用して探す | TwitterやFacebookといったSNSを利用する | SNSで投稿する |
興信所に依頼する | 事件性がなくても捜索してくれる | 興信所・探偵事務所で依頼する |
興信所は、警察と異なり事件性がなくても探してくれる一方で、相応のコストが必要です。
また、行方不明者の過去の写真や住んでいた地域などの情報がまったくない状態では、いくら人探しのプロでも、探し出すのは容易ではありません。
そのため、依頼する前に可能な限り、行方不明の方の情報を集めるようにしましょう。
行方不明の相続人を探すための費用
行方不明の相続人を探し出すために掛かる費用は以下のとおりです。
捜索方法 | 費用 |
戸籍の附票を確認して探す | 写しの発行費用:1枚300円 |
警察に捜索願を提出する | 無料 |
SNSなどを利用して探す | 無料 |
興信所に依頼をする | 15万円~40万円(住所がわからない場合) |
興信所に依頼する場合は、事前にわかっている情報によって費用が変わってきます。情報が少ない場合は多額の調査費用が掛かるため、注意が必要です。
また、興信所によっては費用が安い代わりに、失敗しても費用が発生する場合もあります。そのため、興信所に人探しを依頼する場合には、事前に見積もりが必要でしょう。
相続人が海外で行方不明の場合の対処法
相続人が海外に移住しており、長期間音信不通で行方不明の場合は、外務省が行っている所在調査を行いましょう。
所在調査とは海外移住をして長期に渡って音信不通になっている日本人の住所や連絡先を、大使館や総領事館に保管されている資料を基に調査する制度です。
ただし、調査するためには以下の条件を満たすことが必要です。
- 調査する人と依頼人が三親等以内の親族であること
- 調査する人が日本国籍を有している海外在住者であること
- 現住所が不明であること
- 渡航した国や州などが特定できること
- 親族に確認しても所在が確認できないこと
上記の条件を満たしている場合には、外務省が調査を行ってくれます。
ちなみに、所在調査の結果が分かるには数カ月掛かるので、あらかじめ海外で行方不明の相続人がいる場合は確認するようにしてください。
失踪宣告の流れ
行方が分からない相続人の生死が7年以上不明である場合は、失踪宣告を家庭裁判所に申し立てることで、行方不明の相続人を死亡したものと扱うことができます。
そうすることで、遺産分割協議の参加の義務や相続人から除外されるため、遺産相続を行うことが可能です。
なお、失踪宣告を行うには、主に以下の5つの手順を経る必要があります。
- 家庭裁判所へ申し立てる
- 家庭裁判所による行方不明者の調査
- 失踪に関する届出の催告を公示
- 失踪宣告の審判の確定
- 戸籍の変更手続き
それぞれについて説明していきます。
家庭裁判所へ申し立てる
初めに行うことは失踪宣告の申し立てを行うことです。
ただし、家庭裁判所で申し立てを行う前に以下の条件を満たしているのかを確認する必要があります。
- 行方不明になってから7年経過しているか
- 特別失踪(船舶が沈没したなど危難が原因で行方不明になっている場合)で1年経過しているか
上記の条件を満たしている場合は、相続人が家庭裁判所に申し立てることで失踪宣告の手続きが開始されます。
行方不明者の調査
家庭裁判所に申し立てを行うと、行方不明者の調査を家庭裁判所が開始します。
調査の内容は主に運転免許の更新がされていないかや、警察などに行方不明者の情報が登録されていないかなどです。
仮に情報が登録されている場合は申告手続きが取り下げられますが、家庭裁判所から相続人の情報を教えてもらうことができます。
一方で、情報が登録されていない場合は、親族に聞き取りを行い失踪宣告の手続きの可否を家庭裁判所が判断して、問題がなければ公告の手続きに進みます。
失踪に関する届出の催告
家庭裁判所による調査が終了すると、「失踪に関する届出の催告」という公告を官報で2回行います。
官報とは法律の公示や改正、破産や相続などの裁判について記載されている国が発行する新聞のようなものです。
記載される内容は主に以下になります。
- 失踪宣告の申し立てがあること
- 本人は生存の届出を提出しなければ失踪宣告されるということ
- 生存を知っている人は届出をしてほしいということ
上記の内容を6ヶ月程度公告して行方不明者からの届出を待ちます。
失踪宣告の審判の確定
公告期間が終わるまでに行方不明者からの届出がない場合は、家庭裁判所の失踪宣告の審判を行って審判の確定が行われます。
この際に申し立て人には審判書謄本が送付されて、2週間以内に即時抗告がなければ審判が確定する形です。
戸籍の変更手続き
失踪宣告の審判が確定したら、行方不明の戸籍を変更します。
戸籍を変更するためには、審判確定日から失踪届けを10日以内に提出しなければなりません。
失踪届を提出することで、行方不明者の戸籍に死亡日が記載されます。
失踪宣告の申立てに必要な費用
失踪宣告を申し立てるのに必要な費用は以下の表になります。
項目 | 金額 |
収入印紙 | 800円 |
連絡用郵便切手 | 1万円程度(所管の家庭裁判所によって異なる) |
官報広告料 | 4,816円 |
出典:最高裁判所(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_06/index.html)
ただし、上記の費用は自身で手続きを行った際に掛かる費用です。
司法書士に依頼する場合は、上記の費用に加えて8万円~20万円程度の費用が掛かります。そのため、司法書士に依頼をする場合は最大で21万6,000円程度の費用が必要です。
このように司法書士に依頼する場合は多額の費用が掛かるため、注意してください。
相続人が連絡拒否しているときの対処法
相続人が連絡拒否をしている場合でも、遺産分割協議に相続人全員が参加する必要があります。そのため、連絡拒否されている状態では、遺産相続ができません。
ただし、説得や話し合いにも応じずどうしても連絡が取れない場合は、法的手続きを行うことで解決できます。
ここでは、相続人が連絡拒否をしているときの対処法について紹介していきます。
連絡拒否することで不利益を被る可能性があることを伝える
連絡拒否をしている相続人に遺産分割協議に参加しないことで、不利益があるということを伝えることが重要になります。不利益を伝えることで話し合いに応じてくれる可能性があるためです。
連絡を拒否することで被る不利益には主に以下の4つがあります。
- 被相続人が亡くなってから3カ月経過をすると相続放棄ができなくなり、借金を背負う可能性がある
- 被相続人の預金が引き出せない
- 不動産を売却することができない
- 相続申告で配偶者の減税などの節税になる特例を受けることができない
ただし、相続人が遺産相続に関心がない場合は不利益を説明しても有効ではありません。
そういった場合は相続放棄をしてもらうように話し合いを行うようにしてください。
第三者を仲介して解決する
仲が悪い親族がいるため連絡を拒否している場合は、弁護士など第三者に依頼して仲介に入ってもらう方法がおすすめです。
弁護士という専門家が間に入ることで話し合いに応じてくれる可能性があります。
ただし、中には弁護士が仲介に入ったことで法的措置を取られると思い、態度がより頑なになってしまうケースもあるため注意が必要です。
そういったケースでは、共通の知り合いなど相手が態度を軟化させる可能性がある人や不動産会社に仲介に入ってもらうようにしてください。
家庭裁判所で法的手続きを行う
第三者に仲介に入ってもらっても話し合いができなくてどうしようにもない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てを行って解決します。
しかし、遺産分割調停も調停員が間に入って話し合いを行うため、連絡拒否をしている相続人が出席せずに解決できないケースも珍しくありません。
そういった場合は「遺産分割審判」で提出された資料を基に、裁判官が遺産分割の方法を決めてくれます。
この遺産分割審判は連絡を拒否している相続人が出席しなくても相続の手続きを行うことが可能です。
なお、遺産分割審判は法定相続分で遺産を分割するようになるケースがほとんどになります
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