自宅を相続したら相続税は必ずかかる?基礎知識から節税方法まで解説

自宅を相続したら相続税は必ずかかる?基礎知識から節税方法まで解説

自宅を相続する場合、相続税が発生するかどうかはさまざまな条件によって異なります。また、知らないと損する節税方法や特例も存在します。

相続税がかかるケースや計算方法、節税のコツまでわかりやすく解説します。

自宅を相続したら、必ず相続税がかかる?

相続税には基礎控除があり、一定額までは相続税がかかりません。まずは、相続税をどのように計算するのか確認していきましょう。


相続税には基礎控除がある

相続税は預貯金などの現金だけでなく、株式、保険金、不動産など、被相続人(亡くなった方)のすべての財産を合算して相続税額を計算します。また、計算の際は借金やローンなどのマイナス資産や葬儀代などの費用を相続財産から差し引きます。

相続税の計算では、まず相続財産から基礎控除を差し引きます。基礎控除の計算方法は次のとおりです。

3,000万円+600万円×相続人の数

基礎控除額は、相続人の数によって異なります。夫が亡くなり相続人が妻、子ども2人の場合は相続人が3人となるため、基礎控除は4,800万円です。つまり相続財産が4800万円までであれば、相続税はかかりません。

また、相続するのが自宅の場合は、他の財産にはない特例がいくつかあります。特例をうまく活用することで、相続税を節税できる可能性があります。


相続税額を計算する7つのステップ

相続税の計算は複雑ですが、ステップを踏んで順に計算していきましょう。主なステップは次のとおりです。


相続税額を計算する7つのステップ

ステップ1 相続財産の評価額を算出 現金、株式、不動産、保険金などのすべての財産を時価で評価し、足し合わせる。マイナスの財産は差し引く
ステップ2 基礎控除額を算出 相続人の数などに応じて、基礎控除額を計算する
ステップ3 課税遺産総額を算出 相続財産の評価額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出する
ステップ4 相続人ごとに相続税額を算出 法定相続人ごとに、法定相続分で相続税率を適用する。相続税率は累進課税方式となっている
ステップ5 相続税額を計算 ステップ4で算出した相続税額を足し合わせる
ステップ6 税額控除 配偶者控除など、適用できる税額控除を差し引く
ステップ7 納付税額を確定 計算された相続税額から税額控除を差し引いた金額が、最終的な納付税額となる

参考:国税庁「No.4155 相続税の税率相続税の税率

なお、生前贈与がある場合は、受け取っていた期間や形態によって相続財産額に含める場合もあります。また、自宅の評価額を下げる「小規模宅地等の特例」の制度を適用する場合は、ステップ1「財産の評価」のときに計算する必要があります。


自宅の相続税評価額はどのように決まる?

相続税の計算では、まず自宅を含めた財産の評価額を算出しなくてはなりません。そこで、自宅の土地、建物の相続税評価額を算出する方法について解説します。


土地の評価額

相続の際、一般的に土地の評価額は相続税路線価を基準として算出します。路線価とは、国税庁が毎年公表する評価額の基準となる土地の価額のことです。接する道路の利便性や幅、不整形の度合い、角地などさまざまな条件を考慮して決められています。

また、地域によっては倍率方式をとるエリアもあります。倍率方式では、土地の固定資産税評価額に定められた評価倍率を掛け合わせて、土地の相続税評価額を算出します。

たとえば、路線価を利用して相続税評価額を算出する場合、東京都内のある道路沿いの路線価は「1510B」と表記されています。路線価は1,000円単位で表記されるため、「1510B」は1,510千円 =1,510,000円/㎡、つまり151万円/㎡という意味です。

151万円/㎡の道路に面した、面積80㎡の宅地の場合、次のように計算できます。

151万円/㎡×80㎡=1億2,231万円

この場合、この土地の相続税評価額は1億2,231万円となります。

参考:国税庁「令和6年分の路線価等について
参考:国税庁「財産評価基準書路線価図・評価倍率表


建物の評価額

建物の評価額は、固定資産税評価額をもとに算出します。固定資産税評価額は、木造、鉄筋コンクリート造など建物の構造、築年数、所在地などを考慮して算出されたものです。

毎年、固定資産税納税通知書と一緒に送られてくる課税明細書の評価額の欄で確認できます。そのほか、市区町村の役所などで閲覧できる固定資産課税台帳や、固定資産評価証明書を取得することでも建物の評価額を調べられます。


自宅の相続税を節税できる特例

自宅の相続税を節税するために、次のような特例を活用できるケースもあります。


  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者居住権
  • 配偶者控除
  • おしどり贈与

夫婦間や家族間で活用できる可能性の高い相続や贈与の特例について、順に解説します。


小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、自宅として使っていた土地の評価額を最大80%減らせる制度です。たとえば、評価額が1億円の土地であれば、2,000万円と見なせるため、相続財産に加算する金額が2,000万円になります。

これは都心部など、高額な相続税の負担によって、残された配偶者や子どもが自宅を手放さざるを得ない状況を回避するためにつくられた制度です。

そのため、適用の条件は次のようになっています。


  • 被相続人の自宅として利用されていた土地で、今後も相続人が自宅として住むこと
  • 居住用の宅地の場合は330㎡まで

ただし、最近では被相続人が亡くなる前に老人福祉施設などに居住しているケースも多くなっています。このようなときは、亡くなるまで自宅に居住していなくとも、制度の適用が認められます。

また、被相続人の子どもが自宅と土地を引き継ぐ場合は、被相続人の配偶者がいないこと、などの条件もあります。適用条件は複雑なため、制度が適用できるかどうかは税理士など専門家に相談する必要があるでしょう。

参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


配偶者居住権

配偶者居住権は被相続人が亡くなったあとも、配偶者が自宅に住み続けられる権利です。これまで法定相続分で遺産を分けると、夫が亡くなったあとの妻の生活費が足りなくなるなどの問題がありました。

たとえば、夫の財産が自宅2,000万円、現金2,000万円、相続人は妻と子ども1人とします。この場合、残された妻が2,000万円の自宅を相続する代わりに、同額の現金を子どもに渡すことになります。

すると、妻は2,000万円の自宅のみ、子どもが現金2,000万円との分け方となり、妻は住む場所はあっても手元に現金が残らない事態になります。

これを解消するために、配偶者居住権の制度ができました。たとえば、自宅は子どもに評価額1,000万円として引き継ぎ、妻の居住権を1,000万円と換算することで、残る現金の分け方も同額程度にできるようになったのです。


配偶者控除

相続人が配偶者の場合、一定額の控除を受けられる制度です。配偶者が遺産分割や遺贈で取得した財産が次のいずれかの多いほうの金額までは、配偶者に相続税がかかりません。


  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額(遺産総額の2分の1)

一方で、配偶者に相続すれば相続税がかからないからといって、財産のほとんどを配偶者に引き継ぐのはおすすめできないケースもあります。将来的に配偶者が亡くなり、子どもなど次の相続人に財産を引き継ぐ際に、より高額な相続税を課される可能性があるためです。

参考:国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減


おしどり贈与

おしどり贈与は、正しくは「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」といいます。

おしどり贈与は、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産や居住用不動産を購入するための資金を贈与したときに、贈与税の基礎控除110万円に加えて2,000万円まで贈与税が非課税となる制度です。

自宅や自宅の購入資金を生前贈与することで、相続時に自宅の評価額を下げたり、被相続人の財産を減らしたりできる可能性があります。おしどり贈与では、同じ配偶者からの贈与は一生に一度のみ受けられます。

参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除


自宅の評価額が2500万円の場合、相続税はかかる?

では、実際に自宅の評価額2,500万円(特例適用前)の場合は相続税がかかるのか、実例を見ていきましょう。ここでは次の条件でシミュレーションしてみます。


  • 被相続人:父
  • 相続人:母(配偶者)、長男、長女
  • 相続財産:自宅2,500万円・預貯金2,000万円・生命保険1,500万円(受取人は妻)

この場合、相続財産全体の評価額は6,000万円となります。相続人の数が3人のため、基礎控除額は4,800万円です。そのため、4,800万円を超える1,200万円に相続税が課される計算になります。

しかし、自宅を妻が相続して引き続き住み続ける場合は、小規模宅地等の特例が適用できる可能性が高くなります。

自宅の土地面積が330㎡以内とすると、自宅の評価額2,500万円は80%減じて500万円となります。その結果、相続財産の合計は4,000万円になるため、相続税がかからない計算になります。

なお、条件を満たす死亡保険金は、相続人×500万円分の金額を相続財産から差し引いて相続税を計算できます。


自宅が不要なら、相続後の売却も視野に!

自宅を相続しても、実際に住む予定がない場合や維持・管理が困難な場合は、相続後に売却も視野に入れて考えるのが良いでしょう。

ここでは、空き家を手放したほうが良い理由や売却方法について紹介します。


空き家を手放したほうが良い理由

空き家を放置すると、次のような問題が起こる可能性があります。


  • 相続登記の義務化
  • 特定空き家への指定
  • 地域の防災上の問題
  • 近隣とのトラブル
  • 財産価値の低下

2024年4月から、相続開始後3年以内に相続登記することが義務化されました。正当な理由なく相続登記しなかった場合は、10万円以下の過料が課される可能性があります。

また、長期間放置された空き家は、特定空き家に指定される懸念があります。放置された空き家が適切に管理されていないと判断され、特定空き家に指定されると「住宅用地の特例措置」を受けられなくなるのです。その結果、固定資産税額が約6倍になってしまうため注意が必要です。

空き家は、倒壊や火災のリスクも高く、近隣住民が不安に感じます。地震や台風などの自然災害が発生した場合、倒壊した建物が原因で近隣の家が破損したり、火事が燃え広がったりと二次災害が起こる危険性もあるのです。

また、不法侵入やゴミの不法投棄といった問題も発生しやすく、地域の治安を悪化させる要因となるため、近隣からクレームが入る可能性が非常に高くなります。

そのまま空き家を放置しておくと、建物の老朽化が進み、いざ手放したいと思ったときには売却価格が大幅に下がり、売れない可能性が高くなります。建物には価値がなくなってしまうため、解体して更地にしなければ売れないなど、売却のための費用がかさんでしまうでしょう。

空き家の管理が難しい場合は、売却、賃貸、リフォーム、解体など、自身の状況に合わせて最適な方法を早めに選ぶことが大切です。

参考:東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 !~


自宅を売却するなら複数の不動産会社に見積もりを依頼

相続した家を売却するなら、複数の不動産会社に見積もりを依頼しましょう。複数の見積もりを取ることで、所有する空き家の相場を把握できます。さらに、それぞれの不動産会社の顧客や得意なエリアなどは異なるため、より高値で売却できる可能性が高まります。

特に、相続後3年を経過する日までに売却すれば、「相続財産譲渡時の取得費加算特例」もしくは「3000万円の空き家特例」が適用できる可能性があります。

期限が迫ってくると、買主に買い叩かれるおそれもあるため、早めに売却に向けて行動しましょう。


売却には買取の選択肢もある

相続した自宅をすぐに現金化したい場合や、不動産売却の手続きが面倒だと感じる場合は、買取という選択肢もあります。買取は不動産会社に直接自宅を買い取ってもらうため、買い手を見つけるまで待つ必要がなく、素早く売却できます。

また、仲介による売却に比べて手続きが簡単で、荷物の片付けや掃除、リフォームなどの手間もかかりません。一方、片付けやリフォームを織り込んだ査定額での買取になるため、売却よりも価格が低くなる傾向があります。自身の手間や、かけられる期間を考慮して最適な方法を選びましょう。


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