親が住んでいた実家を相続しても、自身が住むとはかぎりません。売却することもあるでしょう。
今回は、相続した居住用不動産の売却時にかかる税金を節約するための特例について解説します。
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居住用不動産を売却した際に発生する税金
まずは相続した居住用不動産を売却する際にかかる税金について、詳しくみていきます。
相続した居住用財産を売却する際にかかる印紙税と譲渡所得税
相続した居住用財産を売却する場合には、印紙税と、譲渡所得に対する譲渡所得税を要します。
印紙税とは、不動産売買契約書に添付する印紙代のことです。不動産契約書の印紙税は、契約金額に応じて軽減措置が適用されます。
譲渡所得税は、次のような計算式で算出する所得にかかる税金です。
課税の対象になる譲渡所得の金額=売却価額−(譲渡費用+取得費)−特別控除額(条件あり)
計算式の中にでてくる「譲渡費用」とは、不動産を売却するために支出した費用で、主に次のようなものがあげられます。
- 売買仲介手数料
- 建物を取り壊して敷地を売却した際の費用
- 旧耐震の建物を新耐震にリフォームした際の費用
- 測量費、印紙代、立退料など
そして「取得費」とは、売却した不動産の購入代金や売買仲介手数料などの合計金額です。売却予定の不動産が建物の場合は、減価償却費相当を控除します。
譲渡所得税には、特例や軽減制度があるため、制度とご自身のケースとを照らし合わせることが重要です。
相続不動産を売却する際の税金と軽減制度・特例
相続した居住用の財産を売却する場合、相続人の状況によって、かかる税金には次のような違いがあります。
- 相続人(子)がその居住地に居住している場合
- 相続人(子)がその居住地に居住している場合
売却により生じた譲渡所得に対して、「所得税」と「復興特別所得税」が課税される点は、どちらの状況でも同じです。しかし「相続人(子)が自宅として居住していた場合」は、居住財産とされ、次の特例の対象となります。
特例 |
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最高3,000万円の特別控除の特例 |
居住用財産を10年以上所有した場合の軽減税率の特例 |
特定の居住用財産の買換え特例 |
控除 |
マイホーム買換の際に生じる譲渡損失の繰越控除 |
特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除 |
一方、被相続者(子)がその住居に居住していなかった場合は、これらの特例や控除は適用されません。したがって、譲渡所得に対して所得税、復興特別所得税、住民税がそのまま課税されます。
また、相続税を納付済みの場合は、相続税を申告する期限の翌日から3年以内に相続不動産を売却した場合にかぎり、相続税の一定額を取得費に加えることができます。
相続した居住不動産の売却にはどのような方法があるのか
相続した居住用不動産を売却するまでには、どのようなステップがあるのでしょうか。
相続した居住用不動産を売却するまでの流れ
相続した不動産を売却するまでのステップは、主に6つあります。それぞれの段階の詳細は、次のとおりです。
ステップ1遺言書の確認 |
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被相続人の遺言書がある場合には、その内容に従います。遺言書は自宅だけでなく、公正証書遺言が公証役場に保管されている場合もあるため、自宅にない場合は公証役場に確認してみましょう。自宅で遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所で検認手続きをすることが必要です。 |
ステップ2法定相続人の確認 |
「被相続人の出生時から死亡時までの連続した戸籍謄本と除籍謄本」を取得し、相続人を確認します。この書類は、相続登記の添付書類となる「相続証明情報」を取得する際にも必要です。書類の内容が難しかったり、集める時間がなかったりする場合は、司法書士に依頼すると、負担を軽減できます。 |
ステップ3相続財産の調査 |
相続財産の調査では、主に現金や預貯金、借入や債務の有無などを調査します。不動産相続においては、特に「権利証の名義が被相続人になっているか」の確認をしましょう。 |
ステップ4遺産分割協議 |
遺産分割協議とは、相続人が複数いる場合、相続財産をどのように分けるかを決める協議のことです。不動産をどのように分割するか話し合いがまとまったら、「遺産分割協議書」を作成します。この遺産分割協議書は、相続登記の際に必要となる重要な書類です。 |
ステップ5不動産の相続登記申請 |
「相続登記申請」とは、不動産の名義を被相続人から相続人に変更することを法務局に申請することです。この作業は非常に煩雑なので、遺産分割協議書の作成と一緒に、司法書士にお願いすると、スムーズに進みます。 |
ステップ6不動産の売却 |
不動産売却で建物を解体すべきか迷いが生じたら、不動産会社に相談することをオススメします。なぜなら解体には費用がかかるうえに、更地になると固定資産税が上がるため、解体の必要性やタイミングを見極めることは非常に重要だからです。不動産の買手が見つかれば、売買契約を締結し、不動産の名義を新しい所有者に変更できます。 |
空き家を相続した場合の特別控除や特例について解説
2015年の税制改正によって、相続後に空き家となった自宅を売却しても、3,000万円の特別控除が受けられるようになりました。しかし、この控除を受けるためには、一定の条件に合致することが必要です。
空き家の3,000万円控除における要件(相続人)
空き家の3,000万円控除とは、住宅を相続した際に譲渡所得から最高で3,000万円を控除できるシステムのことです。そして、この特例を受けるためには、次の要件をすべて満たす必要があります。
特例を受けられる相続人の要件 |
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被相続人(親)の住宅を、相続し売却した。 |
2016年4月1日から2023年12月末日までに住宅と敷地を、相続により取得し売却した。 |
住宅を取り壊さずに売った場合の要件 |
相続から売却までの期間、住宅と敷地を事業用として使用したり貸し出したりしていない。 |
相続した住宅が一定の耐震基準を満たしている。 |
取り壊し後に住宅を売却した場合の要件 |
相続から取り壊しまでの期間、住宅と敷地を事業用として使用・貸し出しをしていない。 |
取り壊しから売却までの期間に、建物を建築していない。 |
そのほかの要件 |
相続開始から3年目の年の12月末日までに、相続した不動産を売却している。 |
相続した不動産の売却額が1億円を下回っている。 |
相続した住宅や敷地に関して、他の控除や特例を受けていない。 |
親子や夫婦など個人的な関係のある人に相続した住居や敷地を売却していない。 |
空き家の3,000万円控除は取り壊して売却することを想定している
3,000万円の特別控除が適用される「空き家」とは、親が自宅として利用していた住宅を指します。そして、この特別控除を受けるには、相続した空き家が次の要件にすべて当てはまることが必要です。
- 1981年5月末日より前に建築されている。
- 区分所有登記がされていない。
- 相続人が空き家を相続するギリギリまで、親は1人暮らしだった。
空き家の3,000万円の特別控除は、原則として相続した空き家を取り壊してから土地を売却することを想定しています。
なぜなら、特例を受けるためには「相続した住宅が一定の耐震基準を満たしている」という要件を満たす必要があるからです。
ここでの「一定の耐震基準」とは、「1981年の6月から実施された現行の耐震基準」をいいます。したがって、空き家の要件にある「1981年5月末日より前に建築された住宅」の場合、どちらも基準を満たす相続物件は少ないでしょう。また「相続した物件を改築して耐震性能を向上させる」という方法もありますが、築年数の経った空き家を、リフォームの手間や費用をかけてまでして売却しようとする人は多くいません。
したがって、空き家3,000万円に関する特別控除は、原則として相続した空き家を取り壊して売却することを想定しているといえるのです。
実家を相続したけど、自分は別の場所に生活拠点があるので実家には住まない場合は、いずれ売却することになるでしょう。そうなった際は、本文で取り上げたことについてよく理解した上で、的確な対応ができるようにしましょう。
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