火事による告知義務を正確に理解することにより「過去に火事があった物件だけれども、売却をするときに事前に告知をしなければならないのか?」といった悩みが解決できます。
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火事があった不動産は事故物件か
不動産における事故物件とは心理的瑕疵のある不動産と定義されます。
心理的瑕疵とは、殺人や自殺、事故や火災により人が亡くなった場合や、反社会的組織の事務所が近隣に存在するなど「その事実を知っていれば、購入することは無かった」という購入動機に影響を及ぼす情報や事実のことです。
心理的瑕疵は、宅地建物取引業法35条の重要事項説明において、契約締結までに必ず説明を行わなければならない「重大な告知事項」に位置づけられます。
しかし、火事があった物件は、その規模によらず全て事故物件となるのでしょうか。以下で、心理的瑕疵に該当する火事かどうかを判断するために押さえておくべきポイントを解説します。
火事による心理的瑕疵の範囲
原則として「過去の火災」は、全て心理的瑕疵に該当します。では、何年前の火災まで告知しなければならないのでしょうか。
告知が必要な年数については、明確な判断がされていません。
火災で人が亡くなったことのある家屋を、直後に解体して更地にし、月極駐車場として17年間営業した事例があります。売主は告知なしで駐車場用地の売買契約を締結し、後に買主から訴訟を起こされたのですが、その判例では「重要事項の不告知」は否定されました(心理的瑕疵にあたらないという判断)。このケースでは月極駐車場の営業年数が、現状の使用状態も含めて心理的瑕疵を緩和するに十分な時間経過と判断されました。
一方で、人々の記憶に残る大規模な火災で多くの犠牲者が生じた事件では20年を経過しても心理的瑕疵は存在すると判断されることもあります。こういったケースでは50年以上を経過しても心理的瑕疵が消滅すると言い切れません。
つまり、心理的瑕疵は購入者側が事前にその情報を知っていればどのように判断をするか、という主観によって左右されます。家屋を解体して更地にし「お祓い」もきちんとして「10年経過したから告知しなくても大丈夫だ」というのは、売主の一方的な思い込みにすぎないこともあるのです。
また、現在は大規模な火災は画像データや文字情報として広くインターネットで拡散されるため、事件・事故から数十年後であっても、当該地の情報が検索され買主から心理的瑕疵を理由として訴訟を起こされても不思議ではありません。経過年数に関係なく、火災により人が亡くなっている場合には必ず告知をするのが正しい判断と言えます。
ボヤの場合にも必ず告知が必要か
火事がおこったが、幸い消火活動が早く「ボヤ騒ぎ」で済んだ場合はどうでしょうか。
「ボヤ騒ぎ」は、延焼規模により考え方が変わります。「キッチンの一部を焦がした」とか「壁の一面を焦がしたと」言った程度で、火災後にリフォーム工事を行いそのまま不具合なく住み続けた場合には、心理的瑕疵にはなりません。ただし、火災による物理的な瑕疵(隠れた瑕疵)が存在していないかにはご注意ください。
過去の火事と土地の値段の関係
火事によって、実際に事故物件となった場合には不動産価格に影響があるか気になるところです。火災が起きた事故物件と、価格の関係について説明します。
相場の何割が妥当か
近隣の取引事例と比較して、3割減が目安という意見があります。ただし、事故の規模により減額の率が変動します。
先述した「人々の記憶に残る大規模な火災事故」の場合には、5割減で販売しても買い手が付かない可能性があります。一方で、希少性の高い人気エリアで土地が不足している場合には、事故歴のない物件と同様の価格で販売できる場合もあります。
どちらの場合においても、心理的瑕疵について買主が正しく告知を受け、そのうえで購入判断していることが前提です。
直接取引と損害賠償
事故物件に関する告知内容は、主観を交えず、正確に事実関係を買主に伝達する必要があります。ただ伝えた、という程度では将来的に大きなトラブルに発展する可能性が高くなります。
民法では「瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求は、瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない」(民法166条1項)と除斥期間を定めています。つまり、基本的に瑕疵による損害賠償請求権は「買主がその事実を知った」日を起算日とし、1年です。
この損害賠償請求権の除斥期間と瑕疵の消滅時効とは別と理解しておきたいところです。
瑕疵の消滅時効に関しては、民法167条1項で「債権は、10年間行使しないときは消滅する」と定めています。事故物件でも「10年過ぎていれば告知しなくても良い」という主張の根拠にされることがありますが、これでは解釈が間違っています。
判例で、裁判所は「瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権にも消滅時効の適用があり、この消滅時効は売買の目的物の引き渡しを受けた時から進行する」(最高裁平成13年11月27日判決)としています。引き渡しを受けてから10年間に損害賠償請求を起こさない場合には時効が適用できるとの判断です。
事故発生後の経過年数ではない点に注意しましょう。
心理的瑕疵のある事故物件の査定は、不動産のプロでも慎重になります。勝手な思い込みはトラブルのもとなので、個人売買は行わないことをおすすめします。
火事があった家や土地は不動産買取がおすすめ
火災に限らず全ての心理的瑕疵は、伝達の方法や買主の受け取り方により、判断が分かれる非常に難しい案件です。不動産のプロであるはずの仲介業者が介入しているにも関わらず、訴訟が絶えないという現実が裏付けています。
では、実際に火事があった家や土地の売却は、どのように販売をすれば良いのでしょうか。
不動産買取業者にまかせる
事故物件は不動産買取業者に相談して、買取の値段に納得できれば、任せてしまうことをおすすめする声もあります。もちろん、購入するのがプロの不動産事業者であっても、事故の内容は正確に伝えてください。そのうえで買取業者が買取をおこない、そのあとに別の買主に再販を行っても、最初の売主が心理的瑕疵について責任を問われることはありません。
事故物件の取り扱い実績のあるプロに依頼する
事故物件の取り扱いは知識だけで処理ができるほど簡単な取り扱いではありません。
仲介業者に依頼する場合には、必ず事故物件である旨を伝えるとともに、事故物件取り扱い実績のある会社に相談しましょう。
不動産を売却するならオープンハウスが買取ります
オープンハウスは、売れなくて困っている土地、いびつな土地や古い建物が建ったままの土地でも、積極的に買い取ります。
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