新居を建てて旧居が空き家になった、相続で空き家を取得したなど、ちょっとしたきっかけで空き家を所有することがあります。物置代わりにするなどの使い道があるものの、空き家の維持には軽くない負担がかかります。空き家の維持にはどれくらいの費用がかかるのか、内訳や相場を解説します。
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空き家の維持にかかる基本的な費用
空き家の維持にかかる費用の目安としては、次のものが挙げられます。
空き家の維持にかかる主な費用 | 年間の費用目安 |
固定資産税・ 都市計画税 固定資産税 |
8万~15万 |
都市計画税 | 1万5,000~3万円 |
水道光熱費 | 2万~4万円 |
火災保険料 | 1万~6万円 |
交通費 | 6万円(帰省1回につきガソリン代5,000円×12回と仮定) ※場所によって異なる |
合計 | 18万5,000〜28万円 |
物件により維持費用は異なりますが、おおよその費用は18万5,000~28万円です。それぞれの費用について解説していきましょう。
固定資産税・都市計画税
不動産を所有すると毎年かかるのが固定資産税です。市街化区域内に土地・建物を所有している人に対しては都市計画税も課税されます。固定資産税の目安は年間8万~15万円、都市計画税は年間1万5,000~3万円です。
固定資産税は都市部のほうが地方都市より税額が高い傾向があり、不動産の規模やグレードによって算定基準となる評価額が異なります。固定資産税・都市計画税の計算式は次のとおりです。
固定資産税:課税標準額×税率(1.4%)=税額
都市計画税:課税標準額×税率(0.3%)=税額
課税標準額は固定資産税額を算出するもとになる金額で、通常だと評価額と同じ金額になります。しかし、特例を使用したり税負担の調整措置が適用されたりすると課税標準額は評価額よりも低くなります。
水道光熱費
水道光熱費(上水道・下水道、電気料金、ガス代)も、空き家を維持していくのに必要な費用です。水道光熱費の目安は年間2万~4万円程度です。管理をするときに拭き掃除や掃除機の使用などで水道や電気を使用するため、住んでいないからといって解約するのは難しいでしょう。空き家に泊まりがけで清掃などに行く際には、入浴や調理などで使用するガスも必要です。
なお、上水道・下水道、電気料金、ガス代、は使っていなくても解約していなければ基本料金がかかる点に注意してください。
火災保険料
空き家でも火災保険に加入しておいたほうが、不測の事態に備えられます。補償内容により違いがありますが、火災保険料の目安は年間1万~6万円です。空き家でも保険が必要な理由と加入しないデメリットとして、次のものが挙げられます。
- 火災や風災、盗難に対するリスクが高い
- 周辺の建物や通行人などへ被害を与えると損害賠償責任が発生する
空き家は住んでいる人がいないため、一般住宅より火災や風災、盗難に対するリスクが高まります。火災や経年劣化などで周辺の建物や通行人などへ被害を与えると、損害を賠償しなければなりません。火災保険に加入していれば、損害に関する費用を賄えるでしょう。
ただし、空き家の状態がひどすぎる場合は、そもそも保険に加入できないこともあります。活用予定がなければ売却も検討しましょう。
交通費
所有する空き家が遠方にあると、交通費もかかります。隣の県に空き家があると仮定した場合、帰省1回につきガソリン代が数千円かかる場合もあります。管理者の自宅から離れているほど交通費がかかります。
たとえば、東京の自宅から北海道の空き家へ行くには、飛行機代が片道2〜3万円かかるため、年に数回行くだけでも大きな負担となるでしょう。交通費が高額になる場合は、地元の管理会社に管理を委託したほうが費用を抑えられます。
将来的に空き家にかかる費用
空き家を所有・維持していると、いまはかからなくても将来的に発生する費用があります。
項目 | 1回あたりの費用目安 |
修繕費用 | 1万~50万円 |
草刈りなど庭の管理費用 | 1万〜3万円 |
樹木の剪定、伐採費用 | 職人1人1日あたり2万円前後 |
不法投棄された場合のごみ処分費用 | 軽トラック1台:8,000〜1万5,000円 2tトラック1台:2万5,000〜3万9,000円 |
解体費用 | 100万〜300万円 |
ここでは今後かかるかもしれない費用について解説します。
修繕費用
住宅は人が住んでいないと、劣化するスピードが速まる傾向があります。そのため、空き家にしておくと、修繕費用がかかってしまうことがあります。ドアや窓が開閉されないため、湿気がこもりやすく、不具合があっても処置するのが遅くなって家が傷みやすくなるのです。
空き家の修繕項目と目安費用としては、次のものが挙げられます。
修繕項目 | 目安費用 |
給排水設備の漏水 | 3万〜6万円 |
電気設備の漏電 | 7,000〜3万円 |
床の腐食、 欠損、床鳴り |
5,000〜10万円 |
天井の腐食 | 5万~10万円 |
外構の劣化 | 3万~20万円 |
漏水を放置すると家の劣化を早めるため、迅速に修繕しなければなりません。電気設備の漏電は火事の原因のひとつで、火災になると近隣に多大な迷惑をかけることになります。定期的に漏電検査を行うようにしましょう。床や天井の腐食もそのままにしておくと、傷みが激しくなります。崩れ落ちると危険なため、最低限の修繕を行うと安心です。
また、ブロック塀などが倒壊して通行人にケガを負わせると、賠償責任が発生します。もし、塀にヒビが入っていたら、業者に点検してもらって修繕する必要があります。
建物の管理委託費用
空き家が遠い、あるいは忙しく管理できない場合は、管理会社へ管理を委託するケースもあります。空き家管理サービス費用の目安は、月額5,000~1万円前後です。サービス内容は外部確認、清掃・除草、室内確認・清掃、換気・通水、巡回報告書、郵便物の転送サービス、災害時臨時巡回などです。
屋内のみ、もしくは屋外のみであれば1回につき6,000円などのリーズナブルなプランもあるため、必要に応じて利用するのもよいでしょう。
草刈りなど庭の管理費用
建物の管理委託費用ではおさまらないほど雑草が生えている場合は、庭全体を草刈りする必要があります。草刈りを依頼できる業者は、草刈り専門業者、造園業者、シルバー人材センター、便利屋などです。
草刈り費用としては、30坪で2万〜3万円程度が相場ですが、作業内容や草の高さ、土地の状態によって費用が上下します。
業者の種類でもっともコストが安いのはシルバー人材センターで、1時間あたりの料金相場は1,000円〜1,500円程度が一般的です。
樹木の剪定、伐採費用
庭の樹木が生い茂り、隣家の敷地にまで入ってしまうと近隣トラブルの原因となります。また、落ち葉などが他人の敷地に落ちると迷惑になるため、大きな木を伐採する人も少なくありません。
庭木の剪定料金は日当制の場合、職人1人につき1日あたり2万円前後が一般的な相場です。木の伐採費用は高額になることがあり、3〜5mもある木の伐採では(伐採+伐根+処分費)総額2万〜17万円程度かかります。
伐採する木が5mなど高く、幹回りが太い場合はさらに費用がかかるため、相見積もりを取ることをおすすめします。
不法投棄されたごみ処分費用
空き家は人が住んでいないため、ごみなどを不法投棄されるリスクがあります。その場合、不用品回収業者などに依頼して回収してもらうことになります。不用品回収の費用相場は次のとおりです。
- 軽トラック 1台:8,000〜1万5,000円
- 2tトラック1台:2万5,000〜3万9,000円
不法投棄されたら警察や自治体に相談しますが、犯人が見つからない場合もあるため、所有者が費用を負担するケースも少なくありません。
解体費用
利用予定がない、あるいは経年劣化がひどく倒壊などの危険が考えられる場合は、空き家を解体することも選択肢のひとつです。木造の一軒家の解体費用は、100万〜300万円程度が相場とされています。ただし、RC造など解体に手間がかかる建物は、それだけ費用が高額になる可能性が高いでしょう。家の解体費用は一括で支払うのが一般的ですが、売却を前提とした解体はフリーローンや空き家解体ローンが利用可能です。
市区町村の多くは古い家の解体に助成制度を設けているため、空き家の所在地を管轄している自治体に相談してみましょう。
特定空家に指定されるリスクに注意!
費用の負担を嫌がって空き家を放置すると、特定空家に指定されてしまうリスクがあります。ここでは、特定空家と指定されたときの負担について解説します。
特定空家とは
特定空家とは、周辺の生活環境の保全に不適切な状態にある、放置された空き家のことです。国土交通省のガイドラインでは、次の状態にひとつでも該当すると特定空家に認定されます。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
出典:「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針
(ガイドライン)(国土交通省)
たとえば、老朽化によって倒壊のおそれがある、あるいはごみが放置されて周辺の景観や衛生に支障を及ぼしている空き家などが該当します。
特定空家に指定された際のデメリット
特定空家に指定されると、次のようなデメリットが生じます。
- 税金(固定資産税、都市計画税)の特例措置の対象から外れる
- 命令に従わないと50万円以下の過料が科せられる
- 行政代執行により空き家が解体された場合、かかった費用を請求される
居住建物の敷地である「住宅用地」には固定資産税の軽減措置が設けられており、200㎡以下の部分に関しては通常の6分の1に減額されています。しかし、特定空家に指定されるとこの軽減措置を受けられません。そのため、固定資産税額が最大でこれまでの6倍になってしまいます。
さらに、命令に違反すると50万円以下の過料が科せられ、行政による強制撤去がなされた場合はかかった費用を請求されます。
特定空家と管理不全空家の違い
2023年に空家対策特別措置法が改正された際、特定空家とは別に新しく設けられたのが「管理不全空家」です。
管理不全空家は、特定空家ほど景観や衛生上の悪化はないものの、その状態が続くと特定空家になるリスクのある空き家を指しています。
たとえば、次のような住宅が管理不全空家として認定されます。
- 庭の雑草や樹木が生い茂り手入れされていない
- 外壁の一部が腐食や破損し落下・倒壊などの危険性がある
- 敷地内にごみなどが散乱し衛生上や景観に問題がある
特定空家と管理不全空家の大きな違いは、認定基準や行政代執行の可否などです。特定空家は所有者に対して行政が代執行など強制的な措置を行えますが、管理不全空家の場合は空き家の適切な管理などを勧告することしかできず、強制的な力はありません。
活用予定がなければ売却がおすすめ
空き家は維持するのに費用や労力がかかるため、活用する予定がなければ売却などもひとつの選択です。ここでは、空き家を手放すメリットを紹介しましょう。
空き家は近所迷惑になることもある
空き家を放置すると近所迷惑になるおそれが高く、次のような近隣トラブルが発生することが懸念されます。
- 庭の草木が伸び放題になり、近隣に迷惑をかける
- ごみが不法投棄され周囲の景観を損ねる
- 放火による延焼被害が出るおそれがある
- 倒壊による事故で損害賠償を請求される
- 犯罪に利用されやすい
草木が伸び放題になると害虫が大量に発生したり、落ち葉などが隣の敷地に入って迷惑をかけたりします。近所トラブルのもととなるため、注意が必要です。
ごみが不法投棄されると周囲の景観を損ね、放火で延焼し損害賠償責任が発生することもあります。老朽化したブロック塀などが倒壊して通行人にケガを負わせた場合も賠償しなければなりません。詐欺などの犯罪に利用されることもあるため、周囲に迷惑をかけないように気をつけましょう。
維持管理の費用負担が重い
空き家の年間維持費は数十万円になるケースがあるため、毎年コストがかかるのは家計の負担となります。老朽化が進むと修繕費や解体費用などがかかるため、今後さらに出費が増えるかもしれません。
住んでいないにもかかわらず所有者である限り、維持管理をする必要があるため、利用する予定がない場合は手放すのもよい方法といえます。
不動産会社が買い取る場合は空き家の残置物も任せられる
手間をかけずに空き家を処分したい場合は、不動産会社に買い取ってもらうのも得策です。不動産会社によっては、空き家を買い取るときに残置物の撤去を依頼できるため、不用品整理にかかる手間を省けることがあります。更地にする費用の負担もないため、高額な解体費用の捻出に頭を悩ませる必要がないのもメリットです。
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