所有者不明の空き家はどうなる?すぐにできる調べ方と活用方法を解説

所有者不明の空き家はどうなる?すぐにできる調べ方と活用方法を解説

相続をきっかけに所有者不明の空き家を抱えることになった場合、どう対応すればいいのでしょうか?

空き家を放置すると固定資産税の負担や近隣トラブルの原因となるだけでなく、倒壊や不法投棄などのリスクも高まります。

空き家の所有者がわからなかった際に所有者を特定する方法、リスクを回避するためポイント、売却や活用方法を具体的に解説しています。

所有者不明の空き家問題をスムーズに解決するために、最初の一歩を踏み出しましょう。

空き家の所有者を特定する方法

空き家の所有者を特定する方法は、自分で調べる方法と専門家を活用する方法の2種類があります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。


登記情報提供サービスで調べてみる

現在は、不動産登記の情報をインターネット上で確認できる仕組みが整備されています。

そのため、地番と家屋番号が分かっていれば、Web上で不動産の所有者を確認することが可能です。

ただし、登記情報提供サービスで得られる情報は公的な証明書類とはなりません。

相続関係の各種手続きにおいて証明書類としては利用できないということです。

一方、地域の空き家の所有者を調べたいといったケースでは、情報収集の媒体として活用できます。

登記情報提供サービスは有料で、個人利用の場合はクレジットカード決済が必須です。

利用料は取得する情報の種類によって変わりますが、140円~360円程度となっています。

法人として利用する場合は、利用者登録をしたうえで口座引き落としも可能です。


登記事項証明書を取得して確認する

相続手続きなどを想定して正式な証明書類として用意したい方は、登記事項証明書を取得し、所有者を確認した方が効率的です。

登記事項証明書には登記官の認証文が記載されるので、正式な証明書類としての効力があります。

登記事項証明書は不動産を管轄する法務局の窓口で手続きでき、手数料は一通600円です。郵送でも発行手続きを依頼できますが、その場合は事前に入手した交付申請書に600円の収入印紙を貼付し、切手を貼った返信用封筒を同封しなければなりません。

登記事項証明書は公的な証明書類ですが、不動産の所有者確認が目的であれば第三者でも取得できます。


弁護士や司法書士に調査を依頼する

自分で所有者不明の空き家を確認する時間がない、できるだけ手間を省きたいという場合は専門家に依頼するのも一つの方法です。

対応する専門家は弁護士や司法書士の他、土地家屋調査士や行政書士なども可能で、特定の資格に限定されません。

専門家に依頼した際の費用は依頼内容により異なりますが、弁護士の場合で20万円~30万円程度、行政書士で5万~10万円程度です。

しかしながら、専門家でも基本的には前述した方法で不動産登記簿を入手し、所有者の特定を進めることになります。

少しでも費用を抑えたい方は、自分で空き家の所有者を特定したほうがよいでしょう。


所有者不明のまま空き家を放置するリスク

ここでは、所有者不明の空き家を放置した場合のリスクや危険性について詳しく解説していきます。


空き家を処分することができない

相続で自分が不動産の所有者となった場合、他に相続人となる人物がいればその人と共有状態になります。

共有状態となった不動産は、共有持ち分が過半数を超えていたとしても自由に売却できません。

また売却する場合は、共有者全員の合意の下で売却手続きを進める必要があります。

不動産の買い手や取引を仲介する不動産会社はトラブルを避けるため、必ず不動産登記簿を確認して所有者を確かめます。

その際、相続登記(亡くなった被相続人から相続人への名義変更)をしていないと、取引する際に手間と時間がかかるでしょう。

また、相続登記を行うには、不動産を相続する相続人全員が手続きを行う必要があります。

2024年4月に相続登記の義務化がされているため、未登記の場合には罰則が適用され、最大10万円が科されます。

そのため、相続が発生した場合はできるだけ早めに対応するようにしましょう。


空き家が倒壊する危険性がある

人が住まない空き家は朽ちるスピードが早まるといわれています。

相続物件は元々築年数がかなり経っていることが多く、放置していると倒壊の危険が生じるケースも珍しくありません。

もし倒壊によって近隣の住宅や住人、あるいは通行人などに被害が生じれば、所有者として損害賠償の責任が生じることになります。

また、現在は「空き家対策特別措置法」という法律が制定されています。

危険性を生じさせる空き家を放置すると、固定資産税の軽減措置が解除されて税金が高くなるなどのペナルティを課されるかもしれません。

空き家の放置は全国的に問題になっているので、監視の目が厳しくなっていることは知っておきましょう。

参考:e-Gov 法令検索 | 空家等対策の推進に関する特別措置法


空き家に不法投棄される恐れがある

近年、空き家が犯罪者に利用されるケースが実際に多数報告されています。

さらに、管理されていない空き家はゴミや産業廃棄物などが不法投棄されるリスクがあります。

投棄されたごみが原因で周囲に悪臭などの被害が生じれば、その責任は空き家の所有者が取ることになるでしょう。

空き家を相続した際は、管理を怠るリスクがかなり大きいことを認識しなければなりません。


税金がかかり続ける

空き家のまま放置していると、固定資産税や都市計画税などの税金を支払い続けることになります。

土地や建物は住む、住まないに関係なく税金が発生するので、利用しないのであれば早々に処分をするのがおすすめです。

相続物件で共有者がいる場合、その方にも固定資産税を徴収する自治体から支払いを督促されるでしょう。

一般的に、自治体は対象の不動産の近くに住んでいる人物に接触することが多く、通常はその人が代表して納めることが多いようです。

さらに、税金には連帯納付義務というものがあり、空き家の共有者が税金を納めていない場合は、その分も自分が支払うことになります。

そのため、所有者不明の空き家に共有者がいるのであれば、早急にその人物の特定が必要です。

他の共有者の分も税金をまとめて支払った場合は、後から請求するということができます。


所有者が特定できた場合の空き家の活用方法

ここでは、所有者が特定できた空き家の活用方法をいくつかご紹介します。

現在、空き家を所有している方もぜひ参考にしてみてください。


相続土地国庫帰属制度を利用する

買い手が付かない土地を国に引き取ってくれる、「相続土地国庫帰属制度」というものもあります。

こちらは土地のみが対象のため、空き家のように建物が建っている場合は自費での解体が必要です。

さらに、抵当権が付いている土地、土壌汚染がある土地、境界が明確でない土地、他人と争いがある土地などは引き取ってもらえません。

また、以下のような土地も対象外になります。


  • 一定の勾配や崖があり管理に費用や労力がかかる土地
  • 管理、処分を阻害する有体物が地上や地下にある土地
  • その他管理、処分に費用や労力がかかる土地

つまり、管理が困難な土地については国でも引き取るのが難しいというのが現状です。

また、本制度を利用する際は一定の手数料と数十万円程度からの負担金が発生します。

空き家にほかの共有者がいる場合は、共有者全員での利用申請が必要です。

参考:法務省 | 相続土地国庫帰属制度について


賃貸物件に建て替える

空き家をリフォームするなどして賃貸物件に建て替え、賃貸経営をするということも検討できます。

ただし、賃貸経営はビジネスですから、建て替え費用や空室リスクなども考慮しなければなりません。

また、ほかに共有者がいる場合は少なくとも持ち分の過半数がないと、スムーズな賃貸経営は難しいでしょう。

賃貸経営は、物件管理や賃借人管理の手間がかかり、入居者トラブルにも対応しなくてはいけません。

そのような手間や費用が気になる方は、空き家の売却も検討してみましょう。


売却して現金化する

自分で空き家を利用しないのであれば、売却して現金化するのがおすすめです。

ただし、前述したように他に不動産の共有者がいる場合は、全員同意の上で売却手続きを行うことになります。

あるいは、共有者の持ち分を買い取って単独所有になることで、自分だけで空き家の売却も可能です。

売却をすると、所有者責任や固定資産税の税金負担などを心配する必要がなくなります。

空き家の売却では、要件を満たすと譲渡所得から3000万円を控除できる税制上の特例があります。

そのため、売却代金がこの範囲内に収まれば不動産譲渡所得税の負担が生じません。

参考:国税庁 | No.3302 マイホームを売ったときの特例


不動産会社に売却する

一般的に仲介により不動産の買い手を探す方法での売却は、通常3カ月程度かかるといわれています。

さらに、ケースによっては年単位かかることもあるので、早めに売却したい方は不動産会社による直接買取も検討するとよいでしょう。

直接買取は仲介による売買よりも売却価格は下がりやすいですが、早期に空き家の売却が実現が可能です。

また、一般の買い手が付きにくい物件も不動産の直接買取であれば、買い取ってもらいやすいところも利点です。


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