土地や家屋の売買取引では、地中埋設物が大きな問題になることがあります。地中埋設物が不動産売買にどのように影響するか、売主の契約不適合責任の範囲、およびそのリスクを回避するにはどうすればよいのか詳しく解説します。
地中埋設物の基本を解説
地中埋設物とは、土地の中に埋まっている目視できない廃棄物や障害物のことです。
住宅地にある代表的な地中埋設物には、建物の解体後にそのまま埋められてしまったコンクリート片や屋根瓦、木くず、鉄筋などがあります。そのほか、使っていない水道管、浄化槽、井戸、排水管など最初から地中に設置されていたもの、埋もれてしまった大きな庭石や岩なども地中埋設物にあたります。
住宅地では滅多にありませんが、医療廃棄物や古タイヤといった違法に廃棄されたものも地中埋設物にあたります。
土地の売買契約を結ぶ段階では、現地を見ても埋設物を確認できないケースもあり、契約後に発覚すると大きなトラブルに発展することがあります。つまり地中埋設物は、売主・買主、仲介する不動産会社にとって、大きなリスク要因なのです。
地中埋設物も契約不適合責任に問われる?
地中埋設物の存在を買主に告知せず、契約内容にも明記していないと、売主は契約不適合責任を問われるおそれがあります。
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、売買契約の対象物が品質・種類などの点において、契約の目的に適合していない場合、買主に対して売主が負わなければならない責任のことです。契約した内容と異なるものを買主に売却したとして、売主は債務不履行の責任を問われることになります。
契約不適合責任は2020年4月以前まで瑕疵担保責任と呼ばれ、対象は買主がわからなかった傷や欠陥など隠れた瑕疵に限定されていました。
しかし、民法改正により契約不適合責任とされ、隠れた瑕疵に限らず、契約内容と異なった目的物であれば、売主は契約不適合責任を負わなければなりません。買主の請求可能な範囲が広がっており、売主は一層の注意が必要です。
契約不適合責任で売主が買主から請求される内容
契約不適合責任があったときに、売主が買主から請求される項目は以下のとおりです。
- 履行の追完請求
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約解除請求
瑕疵担保責任では損害賠償請求と契約解除請求だけでしたが、契約不適合責任では請求の種類が多くなっています。
履行の追完請求は、契約内容の完全な履行を求めるものです。地中埋設物の場合は、地中埋設物がない状態での引き渡し、つまり売主負担での地中埋設物撤去となります。代金減額請求は、契約代金を不適合内容に応じて減額するものです。地中埋設物の場合は、撤去にかかる費用分の減額などが想定されます。
損害賠償請求は瑕疵担保責任だと、「無駄となった費用(信頼利益)」の賠償請求が認められていました。しかし、契約不適合責任では信頼利益に加え、「契約が履行されていれば買主が得られた利益(履行利益)」も請求可能となり、買主の救済範囲が広がっています。
ほかにも契約解除請求があり、買主から契約そのものの解除が可能です。
地中埋設物が契約不適合責任に問われるケース
地中埋設物があった場合、具体的にどのようなケースで契約不適合責任に問われるのでしょうか。
まず、売主が地中埋設物の存在を認知していたにもかかわらず、買主に告知せず、契約書に明記しないまま契約に至ったケースが挙げられます。告知せず契約し、たとえば買主が予定した建築ができないなど不利益があれば、契約不適合責任を負うことになります。
ただし、地中埋設物が見つかっても、契約不適合責任を問われないケースもあります。それは、地中埋設物の性質や量などが、ただちに買主に損害を与えない場合です。たとえば、建物基礎や水道管などがあっても、買主の目的であった建物の建築に影響がなければ「瑕疵にあたらない」と裁判などで判断されることがあります。
このように、どこからが買主の不利益なのか、あるいは地中埋設物が契約の目的の履行にどの程度支障になるのか、といった点が裁判などでの争点となります。
土地・不動産売却における地中埋設物の対策
土地や不動産を売却するときは、地中埋設物に関してどのような対策をとれば契約不適合責任のリスクを回避できるのでしょうか。
トラブルに巻き込まれないようにその対策を紹介します。
売却前に地中埋設物の有無を調査する
まず、実際に地中埋設物があるのか、調査で確かめることが大切です。いまの所有者である売主が、地中埋設物の有無を知らないときに調べる方法は以下のとおりです。- 地歴調査
- レーダー探査
- ボーリング調査
地歴調査は、過去にさかのぼって売却する土地の「履歴」を確認することです。一番簡単な地中埋設物の調査で、昔の住宅地図や登記簿謄本などを参考に、地中埋設物のリスクを以前の土地の使用状況から推測します。あくまで推測ですので、地中埋設物の有無を完全に判定するには至りませんが、簡易なものであれば5万円~程度の費用です。
レーダー探査とボーリング調査は、実際に現地で調査を行い、地中埋設物の有無を確認する調査です。非破壊検査とも呼ばれるレーダー探査では、電磁波などで地中埋設物や空洞の有無などを調査します。費用は10~15万円程度で、土地の形状や大きさで変わります。
ボーリング調査は地面に穴を開けて、土地の打撃調査やサンプリング調査を行います。地中埋設物の調査では最も精度が高く、費用は調査内容で変わりますが10~30万円です。
売却前に地中埋設物を撤去する
地中埋設物を契約前に撤去すれば、契約不適合責任のリスクは完全になくなります。撤去は程度にもよりますが、重機などで地中埋設物を掘り起こして土地から除去し、産業廃棄物として処理するのが一般的な手法です。
撤去費用も地中埋設物の種類・量などで大きく異なりますが、井戸や浄化槽、地中深くの基礎杭など撤去費用がかさむものもあります。
複数の解体業者から見積もりを取ることが大切ですが、場合によっては100万円以上の高額になります。費用の捻出が難しい場合は、そのほかの対策との比較、検討が必要です。
契約前に地中埋設物の存在を告知し、契約書に明記する
売買契約を締結する前に地中埋設物があることを告知し、契約書に明記しておけば、契約不適合責任に問われることはありません。
買主から見れば契約前に地中埋設物を認識したうえであれば、撤去費用分を減額して売買契約を締結するなど、目的物の価値に応じた公正な取引が可能です。
売主には告知することで売買契約の成立や、価格へ影響することが考えられます。しかし、契約不適合責任に問われるリスクがあるため、公正に取引することを心がけましょう。
売買契約書に免責の特約を設ける
契約不適合責任について、契約書に特約などで免責事項を設けたうえで、契約する手法もあります。たとえば地中埋設物に関して、存在の有無がわからないときは「不知であり一切責任を負わない」ことなどを特約に入れ、免責するのです。
ただし、契約である以上、買主との合意が不可欠ですが、買主としては契約不適合責任を免責することに抵抗を感じるかもしれません。また、買主との合意はもちろん、地中埋設物の存在を故意に隠した場合は、特約自体が無効となって免責されないため注意が必要です。
売主が個人であれば、仲介している不動産会社に情報を共有したうえで対応を相談してみましょう。
買取での売却は免責にすることが可能
不動産会社の仲介ではなく、買取を行っている不動産会社へ直接売却すれば、契約不適合責任を負わず免責できる可能性もあります。
ただし、すべての買取事業者が同じ取り扱いをしているわけではなく、自動的には免責にならないケースもあります。そのため、まずは不動産会社に相談し、契約書の免責事項を確認して判断するようにしましょう。
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