土壌汚染は人体に影響を及ぼすおそれがあり、放置しておくのは危険です。では、土壌汚染の土地を売買するとき、売主にはどのような義務が発生するのでしょうか。
土地売買時における土壌調査義務や説明義務について解説します。
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土地売買時に土壌調査や説明義務はある?
そもそも土壌汚染とはどういったものなのでしょうか。調査や説明義務とあわせて解説します。
土壌汚染とは
土壌汚染とは、工場などで使用されていた有害物質が地表や地下水などにより浸透し、土壌が汚染されている状況を指します。近くに工場などが立地していない場合でも、埋立に使用した土が汚染されている場合や、自然由来で土壌が汚染されていることもあります。
土壌汚染に関するニュースは度々報道されていますが、記憶に新しいのが豊洲市場の移転時に発生した問題です。豊洲市場のある土地には、もともと東京ガスのガス製造工場がありました。
東京都が東京ガスから土地を取得し、土壌調査を実施した際に基準値を大幅に超える有害物質があることが判明しました。豊洲市場の移転スケジュールが大きくずれたことに加えて、土壌汚染がある豊洲市場で食の安全が確保できるのかという問題がテレビなどで大きく報道されました。
土壌汚染の問題は、汚染された土壌そのものではなく、土壌に含まれる有害物質が人間の健康や環境に悪影響を及ぼすことです。土壌汚染は、通常目で見ただけでは判断できないため、詳細な調査が必要になります。
また、土壌汚染が発覚すると不動産取引に大きな影響が生じます。豊洲市場であったようにスケジュールの大幅遅延、調査費用や汚染対策費用に莫大な費用が生じることがあるためです。
調査義務や説明義務について
不動産を売買する場合、土壌汚染の問題をどのように扱えばよいか解説します。
宅地建物取引業者が、土地の売買や媒介をする場合、買主に対して重要事項説明をしなければなりません。重要事項説明のなかでは、土壌汚染対策法に関する説明項目があります。
土壌汚染対策法は2003年に施行された法律で、次のように規定されています。
「土壌の特定有害物質による汚染の状況の把握に関する措置及びその汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を定めること等により、土壌汚染対策の実施を図り、もって国民の健康を保護することを目的とする」(土壌汚染対策法第1条)
土壌汚染対策法では、鉛、ヒ素、六価クロム、水銀など土壌に含まれることにより人の健康に被害を生じるおそれがあるものを特定有害物質と定義しています。すべての土地に調査や報告義務がある訳でなく、以下に該当した場合に調査・報告が必要になります。
- 有害物質使用特定施設(※1)として利用されていた土地
- 3,000㎡以上の土地の形質変更
- 土壌汚染による健康被害のおそれのある土地(※2)
※2 都道府県知事が土壌汚染により人の健康被害に生じるおそれがあると認めた土地
土壌汚染対策法では、特定有害物質の使用届がなく、対象地の面積が3,000㎡未満の場合、通常は土壌調査の義務がありません。しかしながら、マンション用地やオフィスや物流倉庫など大規模な土地売買においては、デューデリジェンス(適正評価)の一環として買主または売主が土壌汚染調査を実施したうえで売買契約を締結することがほとんどです。
一方、土壌汚染があることを売主が知っていた場合、その事実は重要事項説明に買主に対して説明する義務を負います。
土壌汚染は契約不適合責任に問われる?
土壌汚染を隠して不動産取引をした場合、契約不適合責任に問われるおそれがあります。
契約不適合責任とは
売買対象地に土壌汚染がある場合、売主は契約不適合責任を問われるおそれがあります。
不動産売買契約の基礎となる民法では、売買の目的物が種類、品質や数量など契約の内容と適合しない場合、買主は売主に対して目的物の補修や代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行を請求することができます。(民法第562条)
これらは契約不適合責任と呼ばれています。土壌汚染がない土地を前提に土地の売買契約を締結した場合、買主が存在を把握していない土壌汚染を発見した場合、売主に対して契約不適合責任を追求できます。買主から売主に対して契約不適合責任を追及できる方法は以下の通りです。
- 履行の請求権(売主で土壌汚染を撤去したうえで引渡しを行うように請求する)
- 代金減額請求(土壌汚染撤去費用を売買代金から減額するよう請求する)
- 損害賠償請求(土壌汚染の撤去費用および撤去工事により生じた損害を売主に請求する)
- 契約解除(土壌汚染が撤去不可能で、売買の目的を達成できないため契約解除を請求する)
土壌汚染対策法の基準値を上回る土壌汚染が発覚した場合、買主は汚染除去や土壌汚染対策を実施しなければなりません。土壌汚染があることを前提とした売買代金が設定されていない場合、基本的には契約不適合責任が発生すると考えられます。
つまり、通常の売買契約締結後に基準値を上回る土壌汚染が発覚した場合、売主には契約不適合責任が発生すると考えられます。
土壌汚染のリスク回避方法
土壌汚染リスクを回避する方法として、売主が宅地建物取引業者でない場合、買主と締結する売買契約で土壌汚染に関する契約不適合責任を一切負わないとする特約は可能です。
しかし、土壌汚染の存在を知りながら、土壌汚染に関する契約不適合責任を一切負わないとする特約は、信義則違反で無効になるため注意が必要です。
また、単に契約不適合責任を一切負わないとする特約の場合、土壌汚染に関する扱いが不明確となり、当事者間で揉めることがあります。そのため、売買契約書上では、土壌汚染に関する扱いを十分に協議し、契約書に扱いを明記するようにしましょう。
土壌汚染の疑いがある土地を売却するには
土壌汚染の疑いがある場合、売買契約でのトラブルを回避するための具体的な方法を紹介します。
重要事項説明で告知
土壌汚染の疑いがある場合、重要事項説明で買主に正確に説明することで、売主の契約不適合責任を問われない可能性が高くなります。
また、汚染の疑いがある前提で売主の契約不適合責任を免責できれば、土壌汚染による売買代金減額などのリスクは回避できます。
あらかじめ調査しておく
土壌汚染の疑いがある場合は買主も不安になり、売買代金を決定できない可能性が高いため、売主で事前調査することが望ましいです。
土壌汚染の調査にはいくつか段階があります。まずは地歴調査です。直接土壌を採取することなく、過去の住宅地図や航空写真などを利用してその土地の利用履歴から土壌汚染の可能性を判断します。
地歴調査で土壌汚染の可能性が高い又は可能性を否定できないという結果になった場合、土壌採取調査を検討します。
土壌採取調査では、汚染の可能性によって深度や採取密度を検証して調査が進められます。万一、汚染が確認された場合は掘削や化学分解、封じ込めなどにより適切に処置する必要があります。
土壌汚染調査の方法
区分 | 調査内容 | 備考 |
フェーズ1 | 地歴調査 | 公図、登記簿謄本、航空写真、地形図、行政調査などにより対象地の土地利用履歴を調査 |
フェーズ2 | 表層調査 | フェーズ1で汚染の可能性が高い場合、汚染の可能性が否定できない場合に、表層の土壌を採取して調査 |
詳細調査 | 表層調査で汚染の可能性が否定できない場合、汚染が確認された場合、ボーリング調査による詳細調査を実施 |
土壌汚染に関する調査や対応は複雑であり、ある程度の専門的知識が求められます。
そのため、周辺に大規模な工場があるケースや、以前クリーニング店やガソリンスタンドがあり土壌汚染の疑いがある場合は、信頼できる不動産会社に相談することをお勧めします。調査や売却方法について的確なアドバイスがもらえます。
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