賃貸アパートが老朽化すると、さまざまな修繕費用がかかる上に家賃収入は減り、賃貸経営を続けるのが苦しくなる場合があります。
「所有している賃貸マンションをそろそろ建て替えたい」、「相続でもらったアパートを取り壊して自宅を建てたい」「アパートを取り壊して土地を売却したい」など、賃貸アパートの取り壊しや売却を考えているオーナーも多いのではないでしょうか。
マンションやアパートの入居者と交渉して、立ち退いてもらわなくてはなりません。今回は、立ち退きにおけるスムーズな交渉の進め方を紹介します。
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立ち退き交渉の流れ
立ち退きの交渉は、高額な立ち退き費用を請求されたり立ち退きの裁判を起こされたりなど、難航する可能性があります。
だからこそ、「立ち退きの流れ」を最初に把握することが大切です。スケジュールを自分なりに組み立てて、最終的な立ち退き日程から逆算して立ち退き交渉を行うことで、起こりうるトラブルにあらかじめ手を打つことができるようになります。
それでは立ち退きの流れを、順を追って説明します。
賃貸借契約を更新しない内容の通知を送る
まずは、現在契約している賃貸借契約を更新しないという意思表示をしましょう。契約内容によって異なりますが、基本的に貸主からの正当事由による解約通知は、解約日の6か月前に行わなければいけません。
また、通知は必ず書面で行う必要があります。書面で通知したという証拠を残しておくためにも内容証明付きの書面で送ることがベストです。
入居者の立場からすれば、いきなり貸主から内容証明付きの郵便が届けば、感情を害する可能性もあります。そのため、前もって口頭で知らせて、その後に、正式な書面として解約通知を送るという流れをおすすめします。
具体的な交渉を行う
次に入居者と、解約に向けて交渉を行いましょう。
立ち退き交渉では、通知を送れば解約ができるわけではありません。解釈の「正当事由」を伝える必要があります。また、交渉時には解約の期間や立ち退き料、引っ越し費用などの交渉も行わなければいけません。
解約の期間や立ち退き料について詳しくは後述します。
転居先のあっせんをする
入居者は転居先が決まっていると立ち退きに応じやすくなります。そのため、不動産会社の協力のもと、転居先をあっせんするケースは少なくありません。賃借人の事情を考慮しながら、理想の部屋を探せるように協力しながら進めれば、心理面でも効果的といえるでしょう。
明け渡しに関する取り決め
立ち退きは、入居者が明け渡しに合意して初めて成立します。明け渡しに際しては、入居者とは明け渡し合意書を締結しましょう。
合意書には、明け渡し日や明け渡しに伴う費用の負担額、立ち退き料支払いのタイミングなどを明記しておく必要があります。
立ち退きまでの期間や立ち退き料の決め方
立ち退きまでの期間はどの程度見ておいたら良いのでしょうか。また、立ち退き交渉において立ち退き料の決め方や相場、増額交渉された場合の対処など、どのように行えば良いのか解説しますので、必ず把握しておきましょう。
立ち退きまでの期間は半年以上を目安に
前述したように、賃貸借契約を更新しない旨の通知は、最低でも立ち退きが発生する半年前までに送る必要がります。そのため、立ち退きまでの期間は最低でも半年は必要です。
ただし、交渉を行う人数によっても変わります。交渉人数が多いと、それだけ対応が増えるため、どれだけの入居者と交渉しなければいけないのかを前もって把握しておきましょう。
具体的な交渉は2か月前までには完了
立ち退き交渉は、最低でも立ち退きの2か月前までには同意を得る必要があります。転居先のあっせんを行うなら、3か月前までには立ち退きの同意を得て、部屋探しを行うと良いでしょう。
ただし、交渉が上手くいかずに立ち退きの時期をずらすという事態が起こらないように、前もって余裕を持った対応を心がける必要があります。
立ち退き料の目安は裁判の立ち退き料が参考のひとつ
立ち退き料をどの程度に設定すればいいのかという点は、貸主にとって一番の悩みどころです。できるだけ少なく済ませたいものですが、少なすぎると立ち退き交渉が上手くいかず、長引いた結果、費用がかさむこともあります。
立ち退き料は、裁判での判決がひとつの基準となります。裁判では、賃借権の価格を適正な価格を算出するときの目安として利用されます。
具体的には、更地にした場合の土地の価格を算出し、借地権割合や借家権割合をもとに賃借権を割り出すというやり方です。
土地の価格×借地権割合(基本的に70%)×借家権割合(総戸数から算出)
■300㎡の土地で土地の価格が10万円(1㎡あたり)総戸数20戸のアパートの場合
300㎡×10万円×70%×1/20戸=105万円
105万円×20戸=2100万円
と算出されることになります。
引っ越し費用などの実費に迷惑料を加算
実務上は、次の引っ越しにかかる初期費用に迷惑料を加算した金額をベースに交渉するケースが多いです。
- 引っ越し費用が15万円
- 引っ越し先の家賃が7万円とすると敷金礼金が3ヶ月分の21万円
- 仲介手数料が1ヶ月分の7万円
- 迷惑料として10万円程度
この例では、合計すると53万円となります。
立ち退き交渉は不動産会社や弁護士に代行してもらえる
立ち退き交渉は、不動産会社や弁護士に代行してもらうことができます。
不動産会社によっては、立ち退き後の立て替えや売却仲介で収益が見込めるため、立ち退き交渉の費用を請求しないケースが多いです。一方で弁護士は、立ち退き交渉の費用が必要となります。
では、不動産業者や建築業者に立ち退き交渉を依頼した場合のメリットやデメリット、弁護士に立ち退き交渉を依頼した場合のメリットやデメリットについて考えてみましょう。
不動産会社に立ち退き交渉を依頼するメリット
■ わずらわしさから解放される
立ち退き交渉は、貸主の都合で「出て行ってくれ」というお願いなので、あまり気分良く交渉できるものではありません。
不動産会社が交渉を行うことで、報告を聞くことと立ち退き料を決定するだけでいいので、わずらわしいことから解放されます。
また、立ち退き後のアパートやマンションの売却を検討していた場合は、スムーズに進めることができるでしょう。
■ 費用がかからない
立ち退きに関する手数料が一般的にはかからない点もメリットとして挙げられます。
建築業者や不動産業者が立ち退きを行う場合、建築の請負や不動産の売買を業者に任せることを条件として立ち退き交渉を行います。
不動産会社に立ち退き交渉を依頼するデメリット
■ 入居者が不安になる
入居者としては、第3者である不動産会社が、立ち退き交渉をすることをあまり好ましくないと感じるケースも見受けられます。
当事者である貸主が直接対応すると、入居者に伝わりやすいということがあるようです。
■ 不本意な交渉が行われる可能性がある
当初の予定よりも高い立ち退き料で同意を得てしまうこともあるので、あらかじめ一定の約束事は設定しておく必要があるでしょう。
弁護士に立ち退き交渉を行うメリット
■ 法的にスムーズな交渉ができる
基本的に弁護士に依頼するケースとして多いのは、入居者と立ち退き交渉が上手くいかずにこじれてしまった場合です。一旦、こじれてしまうと、当事者間では感情的なやりとりが先だってしまい、交渉をまとめることが難しくなってしまいます。
弁護士に依頼することで、法的な筋道を立てて進めることができるようになり、お互いの感情的なもつれをほどいて、交渉をスムーズに進めることができる側面はあります。
■ 予定通りに進みやすい
弁護士は法的な筋道を立てて交渉を進めるので、入居者としても過度な要求はできなくなり、予定通りに進みやすくなります。
どうしても期日は守らなければいけないときなどは、早めに弁護士に一任して立ち退き交渉を行った方が良いでしょう。
弁護士に立ち退き交渉を行うデメリット
■ 費用が高額になる
弁護士に依頼する場合はどうしても費用がかかります。
前述しましたが、入居者との交渉がこじれて弁護士に依頼する場合は、弁護士報酬や、強制退去に伴う裁判費用などが考えられます。立ち退き費用も高額になる場合があるので、当初の想定金額よりも大きな費用が発生することを考慮しておきましょう。
■ 手間がかかる
不動産会社に依頼する場合は、基本的に不動産会社が貸主宅に訪問して打ち合わせを行うなどの対応をしてくれます。
しかし、弁護士に依頼する場合、打ち合わせなどは全て弁護士事務所で行われるのが一般的です。日程の打ち合わせや訪問など、手間がかかる点がデメリットとして挙げられます。裁判ともなれば、裁判所に出廷することも考えておかなければいけません。
立ち退き交渉が上手くいかない場合は不動産買取がおすすめ
立て替えなどが理由での立ち退きで、どうしても交渉が思うように進まなければ、計画を取りやめて売却することをおすすめします。
立ち退きには費用がかかります。もし裁判となれば、想定の立ち退き費用の何倍も費用がかかることもあります。
例えばアパートやマンションを取り壊して自宅を建てるといったケースでは、売却して得た代金で他の土地を購入した方が効率的なケースもあります。
どうしても想定の金額以上に立ち退き費用がかかる場合は、売却して資産を組み替える方法もあるという点を考えておきましょう。
また、アパートやマンションを不動産会社が直接購入する「不動産買取」であれば、短期間で売却可能で、立ち退きの交渉なども不要なため、手間と時間をかけずに売却することができるでしょう。
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