公開日:2025年06月11日
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相続した不動産を売却する時の手続きの流れや税金・控除・注意点を徹底解説

相続により不動産を譲り受けたものの、「活用予定がない」「維持が難しい」とお困りではありませんか? 相続した不動産の売却は、多くの方にとって初めての経験であり、何から手をつければ良いか分からず不安に感じることもあるでしょう。 この記事では、相続した不動産をスムーズに売却するためのステップ、税金、利用できる特別控除や特例、注意点、よくある質問まで、詳しく解説します。

オープンハウスの買取事例

相続した不動産を売却する時の流れ

相続した不動産を売却する際には、通常の不動産売却とは異なる手続きがいくつか発生します。相続財産である不動産をスムーズに売却するためには、次の流れを理解しておくことが重要です。


不動産を相続する際の手続きについては「家を相続する方へ-不動産を相続する際の必要手続きや書類・方法・費用を徹底解説」で、親の家の売却する時の流れは、「【完全ガイド】親の家を売る方法とは?後悔しないための準備・流れ・税金まで徹底解説」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

①遺言書の有無を確認する

不動産の売却を始める前に、まず遺言書があるかどうかを確認することが最初のステップです。遺言書が存在する場合、その内容に従って不動産の所有権が誰に帰属するかが明確になります。


遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の帰属先や売却代金の分割方法について合意形成が必要です。遺産分割協議は、不動産の売却を進める上で非常に大切なプロセスとなります。


参考:国税庁|相続税の申告のために必要な準備

②不動産の名義を変更する

遺言書の内容や遺産分割協議によって不動産の所有者が確定したら、次に「相続登記」と呼ばれる名義変更の手続きを行います。不動産を売却するには、登記簿上の名義が売主と一致している必要があります。


相続登記は、2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく申請を怠ると過料が科される可能性もあります。また、売却を検討している不動産が共有名義の場合、売却には共有者全員の同意が必要です。名義変更が完了していなければ、売却活動を開始できませんので注意しましょう。

③不動産会社に相談し、土地の査定や調査を行う

名義変更が済んだら、不動産会社に相談して売却したい不動産の査定を依頼します。不動産会社は、土地の形状、建物の状態、周辺環境、市場動向などを総合的に判断し、適正な売却価格を算出します。

④不動産の売却活動(内覧・価格交渉)を行う

査定価格に納得できたら、不動産会社と媒介契約を結び、売却活動を開始します。一般的な売却活動では、インターネット広告やチラシなどを通じて買い手を探し、内覧の対応や価格交渉を行います。


しかし、オープンハウスの場合、直接買取のため媒介契約や販売活動が不要です。

⑤売買契約を結び、不動産を引き渡す

買い手が見つかり、価格や条件の合意に至ったら、売買契約を締結します。契約締結後、残代金の決済と同時に不動産の引き渡しを行います。引き渡しの際、一般的に売主は、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)を負うことになります。しかし、オープンハウスの場合、直接買取が可能なため、契約不適合の免責も可能です。

⑥税務署に申告して税金を納める(確定申告)

不動産を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」という税金がかかる可能性があります。譲渡所得税については、次の章で解説します。売却した年の翌年に確定申告を行い税金を納めましょう。

相続した不動産を売却する時にかかる税金

相続した不動産を売却する際には、主に譲渡所得税と相続税の二種類の税金が関係する可能性があります。譲渡所得税と相続税は、売却益や相続財産の評価額に基づいて計算されます。ひとつずつ見ていきましょう。

譲渡所得税

不動産を売却して利益が出た場合、その利益に対して譲渡所得税が課されます。譲渡所得税は、所得税と住民税、そして復興特別所得税の合計です。まずは、譲渡所得の計算をします。

譲渡所得 = 譲渡収入金額 - (取得費 + 譲渡費用)

各項目について詳しく見ていきます。

譲渡収入金額

不動産の売却代金そのものを指します。売買契約書に記載された金額が該当します。


取得費

不動産を購入したときの費用です。これには購入代金、建築費用、購入手数料などが含まれます。相続した不動産の場合、被相続人が不動産を取得したときの費用を引き継ぐことになります。


もし取得費が不明な場合は、売却価格の5%を「概算取得費」として計上することも可能です。


譲渡費用

不動産の売却に直接かかった費用のことです。具体的には、仲介手数料、印紙税、測量費、建物の解体費用などが該当します。


次に譲渡所得税の税率を決定します。税率は、不動産の所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得として扱われ、税率が大きく変わります。相続の場合には、被相続人が取得した日から起算します。

所有期間所得税・復興特別所得税住民税合計税率
5年以下(短期譲渡所得)30.63%9%39.63%
5年超(長期譲渡所得)15.315%5%20.315%
相続した不動産を売却し、譲渡所得が1,000万円発生した場合の税額を試算してみましょう。所有期間が5年を超えていたと仮定すると、税率は20.315%が適用されます。数式は次の通りです。

税額 = 1,000万円 × 20.315% = 203万1,500円

※税額はあくまで一例であり、個別の状況によって変動する可能性があります。正確な税額を知るためには、税理士への相談や税務署での確認が推奨されます。


参考:国税庁|譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)の計算

相続税

相続税は、亡くなった方から財産を相続した際に課される税金です。不動産も相続財産に含まれるため、相続税の対象となります。相続税は、相続した財産の総額が基礎控除額を超える場合に発生します。


基礎控除額の計算式は次の通りです。

基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が2人の場合、基礎控除額は3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円となります。相続財産の総額がこの金額を超えなければ、相続税はかからない可能性があります。


相続した不動産を売却して得た資金を、相続人同士で分割する場合、その分割方法が相続税の計算に直接影響を与えることはありません。しかし、相続税の納税資金として不動産を売却するケースも考えられます。相続税の税率は、相続財産の金額に応じて段階的に高くなる累進課税制度が採用されています。

課税遺産額税率控除額
1,000万円以下10%-
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
相続税の計算は複雑であり、個別の状況によって適用される特例や控除が異なる可能性があります。相続税の申告や納税には期限があるため、早めに専門家へ相談することが重要です。

法定相続人が1人の場合の手続きについては、「一人っ子の相続におけるメリット・デメリットとは?手続きの流れや注意点も解説」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

相続した不動産を売却する時に利用できる特別控除と特例

相続で得た不動産を売却する際、売却益にかかる税金はなるべく抑えたいところです。また、特定の条件を満たすことで、税負担を軽減できる特例や特別控除がいくつか存在します。ここでは、不動産を売却する際に利用できる主な特別控除と特例について、詳しく見ていきます。

居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除

相続した不動産を売却する際、被相続人が居住していた家屋やその敷地を売却する場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」が適用される可能性があります。譲渡所得から最大3,000万円を控除し、売却益にかかる税負担を軽減できる可能性があります。

適用される可能性がある主な要件は次の通りです。

  • 自身が居住していた家屋やその敷地であること
  • 家屋を取り壊した場合は、取り壊しから1年以内に敷地を売却すること
  • 売却した年の前2年以内および翌2年以内に、この特例や他の特定の特例を受けていないこと
  • 売却相手が、配偶者や直系血族など特別な関係にある者ではないこと

特例を適用することで、課税対象となる譲渡所得が減少する可能性があります。数式は次の通りです。

譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) - 3,000万円

空き家の3,000万円特別控除

相続した不動産が被相続人の居住用であった場合、一定の条件を満たすと「3,000万円の特別控除」を適用して譲渡所得から差し引くことができます。

これは、不動産の売却益に対する課税額を大幅に軽減できる制度です。適用には、被相続人が住んでいた物件であることや、一定の期間内に売却していることなどが条件となります。

取得費加算の特例

相続した不動産を売却する際に、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」、通称「取得費加算の特例」が適用される可能性があります。相続税を支払った場合に、その相続税の一部を売却する不動産の取得費に加算できる制度です。取得費が増えることで、譲渡所得が減少し、譲渡所得税の負担が軽減される可能性があります。

適用される可能性がある主な要件は次の通りです。

  • 相続や遺贈により取得した不動産であること
  • 相続税を納めていること
  • 相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却すること

特例を適用することで、譲渡所得の計算式における取得費が増加します。

譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 相続税額のうち一定額 + 譲渡費用)

例えば、複数の相続人で不動産を分割して取得し、それぞれが売却する場合でも、この特例は個々の相続人に適用される可能性があります。売却益に対する税額を大きく左右するため、売却計画を立てる上で重要な要素となります。

相続した不動産を売却する時の注意点

相続した不動産を売却する際には、いくつかの重要な注意点があります。事前に注意点を把握し、適切に対応することでスムーズな売却と予期せぬトラブルの回避につなげましょう。

相続登記は必ず行う

不動産を相続した場合、まず所有権を明確にするための相続登記が必要です。相続登記とは、亡くなった方から相続人へ不動産の名義を変更する手続きを指します。相続登記が完了していなければ、登記簿上不動産の所有者と確認できず、売却活動が難しくなる場合があります。


2024年4月1日からは、相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。正当な理由なくこの期間内に登記を行わない場合、過料が科される可能性もあります。売却を検討しているか否かに関わらず、相続が発生したら速やかに相続登記を済ませることが重要です。


参考:国税庁|相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期

売却時期は慎重に検討する

相続した不動産を売却する時期は、税金に大きく影響する可能性があるため、慎重に検討することが求められます。特に、相続開始から3年10ヶ月以内や3年以内に売却を完了すると、「取得費加算の特例」や「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」といった税制上の優遇措置が適用できる場合があります。


売却時期の検討にあたっては、市場の動向や不動産の価値変動も考慮に入れるべきです。また、特例適用による税額の変動を事前に把握するため、専門家に相談した上で税額のシミュレーションを行うことも有効な手段です。

不動産会社に査定を依頼する

相続した不動産の売却価格を適正に把握するためには、不動産会社による査定が不可欠です。2、3社の不動産会社に査定を依頼することで、より客観的な市場価値を把握し、売却戦略を立てる上での参考とすることができます。

共有名義の場合は全員の同意が必要

相続した不動産が複数の相続人による共有名義となっている場合、売却には共有者全員の同意が原則として必要です。一人でも反対する共有者がいると、売却を進めることができません。


共有名義の不動産を売却する際には、事前に共有者間で十分に話し合い、売却の意思統一を図ることが重要です。もし意見がまとまらない場合は、共有持分のみを売却する方法や、裁判所を通じて共有物分割請求を行うといった選択肢も考えられます。

相続した不動産を売却する時のよくある質問

相続した不動産の売却は、多くの方が経験する機会が少ないため、様々な疑問が生じるものです。本章では、相続不動産の売却に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。

相続した土地を3年以内に売却すると3,000万円控除を受けられますか?

はい、3,000万円の特別控除が適用される可能性があります。これは「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と呼ばれるものです。特例を適用することで、亡くなった方が住んでいた家屋とその敷地を相続し、一定の要件を満たして売却した場合に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる可能性があります。

相続した不動産を3年以内に売却するとどうなりますか?

相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年以内に売却した場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が適用される可能性があります。本特例は、相続した不動産を売却して譲渡所得が発生した際に、支払った相続税の一部を不動産の取得費に加算できる制度です。


取得費が増えることで、譲渡所得が減少し、結果として譲渡所得税の負担が軽減される可能性があります。


売却を踏まえた上で、不動産の処分方法については、「家の処分を検討している人必見!最適な方法と手順を徹底解説」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

相続した不動産を売却する際、確定申告は必要ですか?

相続した不動産を売却して譲渡所得が発生した場合、原則として確定申告が必要です。譲渡所得とは、不動産の売却によって得た利益を指します。たとえ特別控除や特例を適用して譲渡所得税がゼロになったとしても、確定申告は行う必要があります。申告を怠ると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、注意が必要です。

相続した不動産で売却益が出た場合、税金はいつ支払いますか?

相続した不動産の売却によって発生した譲渡所得税は、売却した年の翌年に確定申告を行います。具体的には、毎年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に、前年1月1日から12月31日までの所得について申告し、納税することとなります。


住民税については、確定申告の内容に基づいて計算され、通常、売却した年の翌年の6月以降に自治体から納税通知書が送付されます。住民税は、一括または年4回の分割で納付することが可能です。

全体の流れを把握しスムーズに売却を進めましょう

相続不動産の売却は、遺言書確認、名義変更、税金申告など多岐にわたります。譲渡所得税や相続税が関係し、所有期間や特例適用で税額変動の可能性があり、相続登記の義務化や共有名義での同意など、注意点も多いです。

本記事を参考に売却までの流れや税金の計算方法を確認した上で、実際の税額の計算は税理士などの専門家にご相談をすることをおすすめします。

須藤光輝

記事監修

須藤 光輝

宅地建物取引士 応用情報技術者

福島県出身。慶応義塾大学理工学部を卒業後、2014年に中途でオープンハウスに入社。
営業推進部門の立ち上げ、戸建事業の経営計画策定、仕入契約条件の標準化、DXを推進。
買取再販部門の立ち上げ、個人から直接用地仕入を行うためのスキーム確立。
契約管理部門の立ち上げ、事業標準化と生産効率の向上。
事業管理部門の立ち上げ、品質・安全性・顧客満足向上と取り組んできた業務は多岐にわたる。
現在は、他社に先行し実家じまい・家じまいのセミナー講師を務める傍ら、戸建賃貸ファンド・アパート事業の責任者をしている。
趣味は考古学、子どもと一緒にパズルを作ること。

福島県出身。慶応義塾大学理工学部を卒業後、2014年に中途でオープンハウスに入社。
営業推進部門の立ち上げ、戸建事業の経営計画策定、仕入契約条件の標準化、DXを推進。
買取再販部門の立ち上げ、個人から直接用地仕入を行うためのスキーム確立。
契約管理部門の立ち上げ、事業標準化と生産効率の向上。
事業管理部門の立ち上げ、品質・安全性・顧客満足向上と取り組んできた業務は多岐にわたる。
現在は、他社に先行し実家じまい・家じまいのセミナー講師を務める傍ら、戸建賃貸ファンド・アパート事業の責任者をしている。
趣味は考古学、子どもと一緒にパズルを作ること。

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