公開日:2025年06月11日
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相続した不動産を売却して3,000万円控除を受けるには?空き家特例の要件を解説!

相続した不動産を売却した際に、3,000万円控除の特例が利用できる場合があります。相続した空き家を売却すると、売却益に応じて所得税と住民税が発生します。しかし特例が適用されれば、売却益から最大3,000万円まで控除できるため、税負担を軽くできます。この記事では、相続した不動産を売却する際に利用できる3,000万円控除について、適用要件から計算方法まで詳しく解説します。ぜひ最後まで読んで、特例に関しての理解を深めてください。

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相続した不動産を売却するなら知っておきたい3,000万円特別控除

相続した不動産を売却する際、譲渡所得にかかる税金は大きな負担となる可能性があります。しかし、特定の条件を満たすことで、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例が存在します。相続不動産の売却を検討している方にとって、税負担を軽減する重要な制度のため詳しくみていきます。

相続した空き家の3,000万円特別控除とは?

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」は、亡くなった方が住んでいた家屋とその敷地を相続し、売却した場合に適用することができる可能性のある制度です。


特例の適用には、次の要件を満たす必要があります。

  • 売却する家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたものであること
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 相続開始の直前において、被相続人が当該家屋に居住していたこと

要件を満たすことで、譲渡所得から最大3,000万円が控除され、税負担が軽減される可能性があります。


(注)令和6年1月1日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります。

マイホームでも使える?居住用財産の3,000万円特別控除の要件

3,000万円特別控除には、相続した空き家を売却する際の特例とは別に、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(マイホーム特例)」があります。これは、ご自身が住んでいた家屋やその敷地を売却する際に適用される可能性がある制度です。


マイホーム特例の主な要件は次の通りです。

  • ご自身が居住していた家屋であること
  • 家屋を取り壊した場合は、その敷地を売却するまでに、その敷地を貸し付けたり、事業の用に供したりしていないこと
  • 売却した年の前々年、前年にこの特例や他の特定の特例を受けていないこと
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • この特例の適用を受けることについて、確定申告書に記載して税務署長に提出すること
  • 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

相続した不動産の場合、ご自身が住んでいたわけではないため、原則としてマイホーム特例は適用されません。相続した空き家を売却する際の特例とは異なる制度として、それぞれに適用要件が定められています。


ご自身の状況に合わせて、どちらの特例が適用される可能性があるかを確認することが重要です。


参考:国税庁|マイホームを売ったときの特例


相続した不動産の売却にかかる税金の詳細については、「相続した不動産の売却にかかる税金は?控除や特例を解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

空き家の3,000万円控除の要件チェックリスト

相続した不動産を売却する際に、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例は、大きな税負担の軽減につながる可能性があります。ただし、特例を適用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。


次の要件チェックリストをもとに、ご自身の状況に当てはまるかご確認ください。


家屋に関する要件
  • 被相続人が居住していた家屋であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • 相続開始直前まで被相続人が居住していたこと
  • 相続開始直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
  • 相続開始から譲渡まで事業用や貸付用として使用されていないこと

譲渡に関する要件
  • 相続または遺贈により取得した家屋であること
  • 譲渡対価が1億円以下であること
  • 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること
  • 家屋を譲渡する場合、譲渡時に耐震基準を満たしていること、または譲渡後に買主が耐震改修を行うこと
  • 家屋を取り壊して更地で譲渡する場合、取り壊し後に事業用や貸付用として使用されていないこと
  • 家屋を取り壊して更地で譲渡する場合、取り壊し後に建物または構築物の敷地として使用されていないこと
  • 譲渡の相手が特別な関係者でないこと

家屋に関する要件では、亡くなった方が一人で住んでいた戸建て住宅が主な対象です。マンションなどの区分所有建物は対象外となります。また、相続が発生してから売却するまでの間、その家屋を賃貸したり、事業に利用したりしていないことが求められます。


譲渡に関する要件では、売却価格が1億円を超える場合は特例の適用外となる可能性があります。また、相続が発生した日から3年目の年末までに売却を完了させる必要があります。


家屋をそのまま売却する際は、現在の耐震基準を満たしているか、または買主が耐震改修を行うことが条件です。もし家屋を取り壊して土地として売却する場合でも、取り壊し後に土地を事業用として利用していないことが重要です。売却相手が親族などの特別な関係者である場合も、この特例は適用されない可能性があります。


本章で解説した要件をすべて満たすことで、本特例の適用を受けられる可能性が高まります。


参考:国税庁|被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

相続した空き家の3,000万円特別控除の計算方法

本章では、特別控除の計算方法について詳しく解説します。

譲渡所得の算出

不動産を売却し利益が出た場合、その利益は譲渡所得として所得税や住民税の課税対象です。相続した空き家を売却する際も、譲渡所得の計算が必要です。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて算出されます。

* 譲渡所得 = 収入金額 - (取得費 + 譲渡費用) *

各項目について説明します。


収入金額

不動産の売却で得られた金額です。売買契約書に記載された売却価格が該当します。


取得費

売却した不動産の購入費用です。購入代金、建築費用、購入手数料、設備費、改良費などが含まれます。相続不動産の場合、被相続人が購入した際の費用が取得費となります。


また、取得費が不明な場合、売却価格の5%を概算取得費として計算する場合があります。


譲渡費用

不動産売却に直接かかった費用です。仲介手数料、印紙税、測量費、建物の解体費用などが該当します。


参考:国税庁|譲渡所得の計算のしかた(分離課税)

3,000万円控除を適用した場合の税額シミュレーション

相続した空き家の3,000万円特別控除を適用すると、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができ、課税対象となる所得を減らせます。この控除適用後の所得が「課税譲渡所得」です。


課税譲渡所得の計算式は次の通りです。

* 課税譲渡所得 = 譲渡所得 - 3,000万円特別控除額 *

課税譲渡所得には、所得税と住民税が課されます。税率は不動産の所有期間で異なり、長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられます。相続不動産の場合、被相続人の取得日から売却日までの期間で判断されます。


所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得です。


次の表は、譲渡所得にかかる税率を示しています。

区分 所得税率 住民税率 復興特別所得税率(所得税額の2.1%) 合計税率
長期譲渡所得 15% 5% 0.315% 20.315%
短期譲渡所得 30% 9% 0.63% 39.63%
※復興特別所得税は、2037年12月31日まで適用されます。

具体的なシミュレーションで、3,000万円特別控除の適用による影響を見てみましょう。


シミュレーション例
  • 売却価格: 5,000万円
  • 取得費: 1,000万円
  • 譲渡費用: 200万円
  • 所有期間: 10年(長期譲渡所得に該当)

まず、譲渡所得を計算します。

* 譲渡所得 = 5,000万円 - (1,000万円 + 200万円) = 3,800万円 *

次に控除を適用する場合としない場合の税額を計算します。


3,000万円特別控除を適用しない場合の税額

課税譲渡所得は3,800万円です。


つまり、税額は、3,800万円 × 20.315% = 771万9,700円となります。


3,000万円特別控除を適用した場合の税額

課税譲渡所得は、譲渡所得3,800万円から3,000万円を控除した800万円となります。


数式は次の通りです。

* 課税譲渡所得 = 3,800万円 - 3,000万円 = 800万円 *

つまり、税額は、800万円 × 20.315% = 162万5,200円 となります。


※シミュレーション結果はあくまで目安です。実際にかかる税金の計算は、税理士など専門の方にご相談ください。


シミュレーション結果から、3,000万円特別控除を適用することで、税額が軽減される可能性があることが分かります。売却を検討している不動産がこの特例の対象となるか、専門家への相談も有効な手段です。


参考:国税庁|長期譲渡所得の税額の計算

参考:国税庁|短期譲渡所得の税額の計算

空き家の3,000万円控除の申請方法

相続した不動産を売却し、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除を適用するには、確定申告の手続きが必須です。特例は自動的に適用されるものではなく、売却した年の翌年にご自身で申告を行う必要があります。適切な書類を準備し、正確な手続きを進めることが重要です。

確定申告に必要な書類

空き家の3,000万円特別控除を適用して確定申告を行う際には、次の書類を準備する必要があります。
  • 確定申告書B様式
  • 譲渡所得の内訳書(計算明細書)
  • 被相続人居住用家屋等確認書
  • 被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の写し
  • 売買契約書の写し
  • 登記事項証明書
  • 取得費がわかる書類
  • 譲渡費用がわかる書類
  • 家屋を取り壊して売却した場合:除却工事請負契約書の写し
  • 家屋を耐震改修して売却した場合:耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書(耐震等級1以上)の写し

各種書類は、譲渡所得の計算根拠や特例の適用要件を満たしていることを証明するために必要です。特に「被相続人居住用家屋等確認書」は、不動産が特例の対象となる空き家であることを市区町村が証明する重要な書類です。


取得費が不明な場合は、概算取得費として売却価格の5%を計上する可能性がありますが、実際の取得費を証明できる書類があれば、より有利な計算となる場合があります。譲渡費用には、仲介手数料や印紙税、測量費などが含まれます。

確定申告の手続き

必要な書類が揃ったら、確定申告の手続きを進めます。手続きは主に次のステップで構成されます。


ステップ1.書類の準備と作成

前述の必要書類を収集し、確定申告書B様式と譲渡所得の内訳書(計算明細書)を作成します。国税庁のウェブサイトでは、確定申告書作成コーナーが提供されており、案内に従って入力することで書類を効率的に作成できます。


ステップ2.申告期間の確認

不動産を売却した年の翌年2月16日から3月15日までの期間に申告を行います。期間を過ぎると、特例の適用が認められない可能性や、無申告加算税などのペナルティが発生する可能性もあります。


ステップ3.書類の提出

作成した確定申告書は、所轄の税務署へ持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)で提出できます。e-Taxを利用すると、自宅からインターネットを通じて申告が完了するため、利便性が高い方法です。


確定申告は複雑に感じるかもしれませんが、正確な申告を行うことで、相続不動産の売却にかかる税負担を軽減できる可能性があります。不明な点があれば、税務署や税理士に相談することも検討してください。


参考:国税庁|【申告書の提出】


不動産を相続する際に必要な手続きについては、「家を相続する方へ-不動産を相続する際の必要手続きや書類・方法・費用を徹底解説」で詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

空き家の3,000万円特別控除についてよくある質問

本章では、空き家の3,000万円特別控除を利用する上で、よくある質問について詳しく解説します。是非、参考にしてください。

被相続人が老人ホームに入居していても適用されますか?

はい、適用される可能性があります。被相続人が老人ホームなどに入居するために空き家となり、その後売却されたケースでも特例対象です。


適用には、被相続人が介護保険法に規定する特定施設に入居していたこと、家屋が居住用として使用されなくなったこと、そして特定施設への入居から3年を経過する日の属する年の12月31日までに家屋を売却することなどの要件があります。


参考:国税庁|被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家


空き家を取り壊して更地で売却する場合でも特例は適用されますか?

はい、更地として売却する場合でも3,000万円特別控除は適用可能です。家屋の取り壊しは売却契約締結前に行う必要があり、取り壊し後の土地は、取り壊しから売却契約締結日まで事業用として使用されていないことが要件です。


売却は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに行う必要があります。

耐震改修をしなくても控除を受ける方法はありますか?

原則として耐震改修を行うか、家屋を取り壊して土地として売却することが必要です。ただし、買主が譲渡後に耐震改修を行う、または家屋を取り壊すことを前提として売却する場合でも特例が適用される可能性があります。


売買契約書にその旨を明記し、買主が譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行い、証明書を提出することが求められます。

共有名義の空き家を売却すると控除額はどうなりますか?

共有名義の不動産の場合、各共有者がそれぞれの持分に応じて3,000万円特別控除の適用を受けられる可能性があります。例えば、2人の共有名義であれば、それぞれ最大3,000万円の控除が適用され、合計で最大6,000万円の控除となるケースも考えられます。


ただし、各共有者が個別に特例の適用要件を満たす必要があります。

特例の適用には注意が必要です

相続不動産売却時の3,000万円特別控除は、税負担軽減に有効な制度です。しかし、適用には建築時期や利用状況、売却時期、価格上限など厳格な要件をすべて満たす必要があります。要件確認を怠ると、控除が適用されず、想定外の税金が発生する可能性があります。また、確定申告では、書類の準備と期限内の申告が不可欠です。


適用要件や手続きに漏れが発生しないように、本記事を再度ご確認ください。

山田拓弥

記事監修

山田 拓弥

宅地建物取引士 相続診断士

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

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