不動産を売却する方法の一つに「不動産買い取り」があります。これは、仲介による売却とは仕組みが異なり、素早い現金化など、メリットを持つ売却方法です。この記事では買い取りの仕組みからメリット、向いているケースまで詳しく解説します。

不動産買い取りとは?基本的な仕組みと特徴
不動産の売却方法として「買い取り」という選択肢があります。これは不動産会社が直接物件を購入する仕組みで、素早い現金化が可能です。
ここでは基本的な仕組みと特徴を分かりやすく解説していきます。
不動産買い取りの基本
不動産買い取りとは、売主であるあなたと買主である不動産業者が直接売買契約を結ぶことです。仲介売買のように不動産会社が仲介するのではなく、買い取りでは不動産会社が直接購入するため、買主を探す時間や内覧の手間が省けます。
即時買い取りと買い取り保証の違い
不動産買い取りには、「即時買い取り」と「買い取り保証」の2種類があります。即時買い取りは、査定後すぐに不動産業者が物件を買い取る仕組みです。一方、買い取り保証は、まず仲介での売却を試み、売れなかった場合に予め決めた価格で不動産業者が買い取るものです。
即時買い取りの最大のメリットは、早期に現金化できることです。急な資金需要や相続などで早く不動産を処分したい場合に適しています。デメリットとしては、仲介売却に比べて価格が低くなる傾向があります。
買い取り保証は、少しでも高く売りたいという希望と、最終的に確実に売却したい場合に有効です。仲介での売却可能性を残しつつ、売れ残りの保険となるため、計画的な売却に向いています。
不動産の買取保証については「住宅の売却方法、「即時買取」と「買取保証」の違いについて解説 」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
不動産買い取りと不動産仲介の違い
不動産を売却する主な方法として「買い取り」と「仲介」があります。売却期間、価格、手続きの負担はそれぞれ異なります。ここでは両者の主な違いを整理して解説します。
不動産買取と仲介については「不動産買取と不動産仲介は何が違う?手数料・相場・メリットを徹底比較」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
売却完了までの期間の違い
買い取りでは不動産会社が直接買主となるため、条件次第で早期の売却完了が可能です。一方、仲介は買主を市場から探す必要があり、売却完了まで数か月かかることも少なくありません。
売却価格の決まり方の違い
買い取り価格は、不動産会社が物件を直接購入するため相場よりやや低めになるのが一般的です。価格は築年数、立地、建物状態に加え、業者側の再販計画やリスクも考慮されます。
一方、仲介は市場で買主を募るため、需要と供給がマッチした買主が見つかった場合相場以上の価格で売却できる可能性もあります。
売却に伴う手間と対応範囲の違い
買い取りは、手続きや対応の負担が少ないのが特徴です。業者が直接購入するため、内覧対応や広告掲載といった準備は不要で、物件の状態によってはそのまま売却できます。
対して仲介では、複数の購入希望者への対応、物件の清掃・補修、条件交渉など、売主側の手間が多く発生します。
契約・引き渡しの進め方の違い
買い取りは、契約から引き渡しまでの手続きがシンプルで迅速に進みます。不動産買取業者が買主のため条件調整がしやすく、契約後すぐに引き渡しの段取りに移れます。
一方、仲介は買主との条件交渉やローン審査の通過を待つ必要があり、契約から引き渡しまで時間を要することがあります。
不動産買い取りのメリット
不動産売却の選択肢として「買い取り」には多くのメリットがあります。仲介販売と比較して、特に時間や手間を節約したい人にとって魅力的な選択肢となっています。
ここでは、不動産買い取りの主な5つのメリットについて詳しく解説します。
売却までの期間が短く、すぐに現金化できる
不動産買い取りの最大のメリットは、売却期間の短さです。仲介販売では買い手探しに数ヶ月以上かかることもありますが、買い取りなら必要な条件を満たせば査定から入金まで1週間程度で完了することも可能です。
急な資金需要や相続税支払いなど、期限がある場合には迅速な現金化が大きな利点となります。不動産買取業者は自社で購入判断ができるため、手続きがスムーズに進みます。
内覧や広告が不要で手間がかからない
仲介販売では、物件を市場に出し、複数の買い手に内覧してもらう必要があるため、清掃や立ち会いなど売主の負担は少なくありません。
一方、買い取りでは、査定のための訪問は基本的に1回のみで、不特定多数に物件を見せる必要がありません。広告も不要なため、プライバシーが守られ、近隣に売却を知られずに済むメリットもあります。
契約不適合責任を免除できる
仲介販売では、契約後の隠れた瑕疵に対し売主が責任を負う「契約不適合責任」があり、売却後の不安となります。しかし、買い取りでは多くの場合、この責任が免除される特約が付くため、売主は売却後のトラブルを心配せずに済みます。
不動産買取業者は不動産のプロとして物件の状態を見極める能力があるため、このようなリスク回避が可能です。
仲介手数料がかからない
仲介販売では、成約時に仲介会社への手数料が発生し、物件価格によっては高額になることもあります。一方、買い取りでは不動産会社が直接購入するため、仲介手数料はかかりません。これは高額物件の売却において大きなメリットです。
不動産買取の手数料については「不動産売却における仲介手数料が無料になるケースや交渉について解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
仲介で売れない不動産でも売れる
仲介販売で買い手がつきにくい、立地条件の悪い物件、築年数の古い物件、特殊な間取りの物件、状態の良くない物件でも、不動産買取業者なら購入してくれる可能性があります。
一般の買い手が敬遠する物件でも、業者は積極的に買い取ることがあるため、「売れない」と諦めていた物件でも売却できる可能性があります。
不動産買い取りのデメリット
不動産買い取りには多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。検討する際は、これらを理解し自身の状況に合わせて判断することが重要です。
仲介よりも売却価格が安くなりやすい
不動産買い取りでは、仲介販売より売却価格が低くなる傾向があります。これは不動産買取業者が物件購入後、土地を活用して新築戸建てやマンションを分譲したり、物件のリフォームやリノベーションで付加価値をつけ再販売する、といったビジネスモデルのためです。
業者は自社リスクで物件を購入するため、再販売時の市場変動リスク、工事費用、販売期間中の金利負担などを考慮した価格設定となり、仲介売買より安価になることが多いです。
築年数や物件の状態によっては断られるケースも
不動産買取業者は必ずしも全ての物件を買い取るわけではありません。特に築年数が古い物件、再建築不可の物件、構造上の問題がある物件、再販が難しい立地の物件などは断られる可能性があります。
また、業者によって得意な物件タイプや地域が異なるため、ある業者で断られても別の業者で買い取ってもらえることもあります。
不動産買い取りに向いているケースとは?
不動産売却の方法には「仲介」と「買い取り」がありますが、買い取りは、特定の状況や優先事項によって、仲介よりも適している場合があります。ここでは、不動産買い取りが特に向いているケースについて詳しく解説します。
早く現金化したいとき
急ぎで資金が必要な場合、買い取りが適しています。相続税納付期限、住み替えの頭金、債務返済、急な海外赴任など、時間的制約がある状況では買い取りの速さが大きなメリットです。買い取りなら1週間程度で現金化できることもあります。
一方、仲介販売は買い手が見つかるまで期間が不確定で、数ヶ月以上かかることも珍しくありません。短期間で売却したい場合は、買い取りが最適な選択肢となるでしょう。
内覧対応や売却準備に手間をかけたくないとき
仲介販売では、物件の清掃、修繕、不用品整理などの準備に加え、購入希望者への内覧対応も必要となり、売主にとって大きな負担です。特に高齢者、遠方居住者、多忙な方にとっては困難でしょう。残置物が多い物件や賃貸中の物件も同様です。
一方、買い取りは査定のための訪問が基本1回のみで、内覧準備や立ち会いの手間が省けます。物件をそのまま売却できるため、準備の負担が大幅に軽減されます。
周囲に知られずに売却を進めたいとき
不動産売却は個人的な事情によることが多く、近隣住民や知人に知られたくない場合もあります。仲介販売では「売出し中」の看板や不動産ポータルサイトへの掲載により、売却の事実が周囲に知られやすくなります。
プライバシーを重視する方や、相続トラブル、離婚などの事情で知られたくない場合は、買い取りが適しています。買い取りでは広告が不要で、不特定多数の人が物件を訪れることもないため、近隣住民に売却を知られるリスクを最小限に抑えられます。
不動産買い取りの流れと必要な手続き
不動産の買い取りは、仲介に比べて手続きがシンプルで、売却までの期間も短いというメリットがあります。ただし、スムーズに進めるためには、事前に全体の流れを把握しておくことが重要です。
ここでは、不動産買い取りの一般的な手順と、それぞれの段階で必要となる手続きについて解説します。
不動産買取の流れについては「不動産・土地・マンション買取の流れ。知っておきたい業者選びのポイント」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
Step1:買い取り査定を依頼する
まず最初の手順は、不動産会社へ買い取り査定を依頼することです。査定では、物件の立地や築年数、面積、周辺の相場などをもとに、会社ごとに買い取り価格が提示されます。
査定は無料で行っている会社が多く、複数社に依頼して比較することで、適正な価格を見極めやすくなります。査定を受ける際は、物件の登記簿謄本や間取り図などの資料を準備しておくと、より正確な金額が出やすくなります。
Step2:価格提示と条件交渉を行う
査定後、不動産会社から正式な買い取り価格が提示されます。価格に加え、引き渡し時期や諸費用の負担など、細かな条件も確認しましょう。納得できれば次のステップへ進みますが、希望と異なる場合は交渉可能です。
交渉では、不動産会社の担当者と話し合い、双方にとって合意できる点を探ることが大切です。
Step3:売買契約の締結と必要書類の準備
価格や条件で合意したら、不動産会社と売買契約を結びます。契約書には売買代金、引き渡し日、支払い方法などが記載されるため、不明点がないかよく確認し署名・押印しましょう。
また、この段階で契約に必要な書類を準備します。主に、本人確認書類などが必要です。不備があると手続きが遅れるため、事前に確認し余裕をもって揃えましょう。
Step4:物件引き渡しと代金の受け取り
契約成立後、指定の引き渡し日に物件を引き渡します。買い取りでは通常、この時点で代金全額が一括で支払われることが多く、迅速な現金化が可能です。引き渡し前に、鍵や設備の確認、登記移転の手続きなどを済ませておく必要があります。
また、司法書士の立ち会いのもと、代金決済と所有権移転登記を同時に行うのが一般的です。安全な取引のため、当日の流れや必要書類は事前に不動産会社と確認しておきましょう。
Step5:確定申告をする
不動産売却で譲渡所得が発生した場合、翌年の確定申告が必要です。買い取りによる売却でも利益があれば、「譲渡所得税」「住民税」「復興特別所得税」が課税されるため、申告を忘れないように注意しましょう。
申告時には、売買契約書、取得費や登記費用などの経費に関する書類を準備します。特例や控除の利用も申告が必須なので、期間内(2月16日〜3月15日)に手続きを行いましょう。不安な場合は税理士への相談も有効です。
不動産買い取り業者の選び方と注意点
不動産買い取りを検討するなら、信頼できる業者選びが重要です。適切な業者ならスムーズな取引と適正価格での売却が期待できますが、そうでないとトラブルも起こり得ます。
ここでは、不動産買取業者を選ぶ際のポイントと注意点を解説します。
複数社に査定を依頼して比較する
買い取り価格は業者で大きく異なるため、複数社に査定を依頼しましょう。一社だけでは価格の適正な判断が難しいためです。比較する際は、価格に加え、対応の丁寧さ、速さ、説明の分かりやすさも重要です。
インターネットの口コミや評判も参考になりますが、極端な評価には注意が必要です。実績や営業年数も確認し、安定した業者を選ぶと取引の安全性が高まります。
契約内容や手数料の有無をしっかり確認する
買い取り取引では仲介手数料は不要ですが、業者によっては事務手数料や成功報酬などの名目で費用が発生する場合があるため、確認が必要です。また、契約書の内容は細部まで確認が重要です。
特に、契約不適合責任の免除条項、手付金の額と解約条件、引き渡し条件など、後々トラブルになりやすい項目は入念にチェックし、不明な点は質問し、理解した上で契約を結びましょう。口約束は後で証明が難しいため注意が必要です。
不動産買取のトラブルについては「不動産買取ならトラブルが少ない?不動産売買で起きるトラブル事例と対策を解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
強引な営業や不透明な価格提示には要注意
「今日中に契約しないと価格を下げる」「他社より必ず高く買い取る」など、強引に契約を迫る業者には注意が必要です。
また、査定根拠が不明確で価格説明をしない業者も避けるべきです。信頼できる業者は、周辺事例や物件状態に基づいた具体的な査定根拠を示します。冷静に判断し、複数業者の意見を聞くことが重要です。
不動産買い取りに関するよくある質問
不動産の買い取りを検討する際には、「価格の決まり方」や「築年数の影響」など、気になる点が多くあります。ここでは、よくある質問とその回答をまとめました。
買い取り価格はどのように決まる?
買い取り価格は、立地や土地の広さ、築年数、建物の状態などをもとに業者が独自に査定して決定します。周辺の取引事例や再販売時のリスクも考慮されるため、一般的に市場価格よりも低くなる傾向があります。
築年数が古くても買い取ってもらえる?
築年数が古い物件でも、買い取りの対象になります。とくに土地の立地が良い場合や、建物の解体・再利用が見込まれるケースでは需要があります。老朽化が進んでいても「古家付き土地」として買い取ることも可能です。
新築分譲を手がける会社にとっては、そうした物件はむしろ需要があります。築年数が古い場合には、まずは不動産買取の選択肢を検討してみるのがおすすめです。
仲介と比べてどのくらい安くなる?
仲介と比較すると、買い取り価格は1〜3割ほど低くなるのが一般的です。不動産買取業者は再販売を前提に価格を設定するため、利益やリスクを加味して査定されます。
ただし、仲介では売れるまでに時間がかかるリスクがある一方で、買い取りはスピードと確実性が魅力です。
不動産買い取りを検討するなら、信頼できる業者に相談を
この記事では、不動産買い取りの仕組み、仲介との違い、メリット・デメリットなどを解説しました。売却を急ぐ方、手間をかけたくない方、仲介での売却が難しい物件をお持ちの方にとって、不動産買い取りは有力な選択肢となります。
もし買い取りに興味をお持ちでしたら、まずは信頼できる不動産業者に相談し、不動産の価値や売却について話を聞いてみることをおすすめします。専門家への相談は、安心して不動産売却を進めるための第一歩となるでしょう。

記事監修
須藤 光輝
宅地建物取引士 応用情報技術者
福島県出身。慶応義塾大学理工学部を卒業後、2014年に中途でオープンハウスに入社。
営業推進部門の立ち上げ、戸建事業の経営計画策定、仕入契約条件の標準化、DXを推進。
買取再販部門の立ち上げ、個人から直接用地仕入を行うためのスキーム確立。
契約管理部門の立ち上げ、事業標準化と生産効率の向上。
事業管理部門の立ち上げ、品質・安全性・顧客満足向上と取り組んできた業務は多岐にわたる。
現在は、他社に先行し実家じまい・家じまいのセミナー講師を務める傍ら、戸建賃貸ファンド・アパート事業の責任者をしている。
趣味は考古学、子どもと一緒にパズルを作ること。
福島県出身。慶応義塾大学理工学部を卒業後、2014年に中途でオープンハウスに入社。
営業推進部門の立ち上げ、戸建事業の経営計画策定、仕入契約条件の標準化、DXを推進。
買取再販部門の立ち上げ、個人から直接用地仕入を行うためのスキーム確立。
契約管理部門の立ち上げ、事業標準化と生産効率の向上。
事業管理部門の立ち上げ、品質・安全性・顧客満足向上と取り組んできた業務は多岐にわたる。
現在は、他社に先行し実家じまい・家じまいのセミナー講師を務める傍ら、戸建賃貸ファンド・アパート事業の責任者をしている。
趣味は考古学、子どもと一緒にパズルを作ること。