抵当権抹消登記の必要書類・手続き・紛失時の対処法を解説

抵当権抹消登記の必要書類・手続き・紛失時の対処法を解説

住宅ローンを完済すると、抵当権抹消登記という手続きを行う必要があります。これは、金融機関などの貸し手が設定した抵当権を、登記簿上から削除するための手続きです。抵当権が残ったままだと、不動産の売却や新たなローンの利用が難しくなるため、早めの対応が必要です。また、相続においても抵当権抹消登記は重要です。家を相続する際、抵当権が付いたままだと、売却や活用をする際に問題が生じる可能性があります。スムーズに相続を進めるためにも、ローン完済後の抹消手続きを怠らないようにしましょう。この記事では具体的にどのような書類が必要なのか、詳しく解説します。抵当権の内容については「抵当権とは?初心者向けにわかりやすく解説!手続き・メリット・デメリットまで」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

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抵当権抹消登記に必要な書類一覧

抵当権を抹消するには、法務局への申請が必要であり、いくつかの書類を揃える必要があります。


必要な書類の一覧は以下の通りです。


  • 登記識別情報通知書または登記済証
  • 登記原因証明情報書類(抵当権解除証書・弁済証書)
  • 抵当権者の委任状
  • 抵当権抹消登記申請書
  • 金融機関などの資格証明書(必要な場合)

一つずつ確認していきます。


登記識別情報通知書または登記済証

これは、不動産の所有者が権利を持っていることを証明する書類です。一般的に「権利証」と呼ばれることが多いですが、平成17年の不動産登記法改正後に発行されるようになったのが「登記識別情報通知書または登記済証」です。


登記識別情報通知書がある場合は、そのまま使用できますが、古い形式の「登記済証」でも代用が可能です。


この書類を紛失してしまった場合、法務局で事前通知制度を利用するか、司法書士の本人確認情報を提出することで対応できます。ただし、再発行はされないため、慎重に保管しておくことが重要です。


登記原因証明情報書類(抵当権解除証書・弁済証書)

この書類は、抵当権がすでに解除されたことを証明するためのものです。具体的には以下のような書類が該当します。

抵当権解除証書 金融機関から発行され、抵当権を解除したことを証明する書類。
弁済証書 ローンの完済を証明するための書類で、こちらも金融機関から提供されることが多い。

これらの書類は、住宅ローンを完済した際に金融機関から交付されるため、銀行から確実に受け取るようにしましょう


もし紛失してしまった場合、金融機関に問い合わせて再発行を依頼できますが、再発行が難しいケースもあるため早めの確認が必要です。


抵当権者の委任状

抵当権を設定している金融機関(または貸主)が、登記手続きを申請者に委任することを証明する書類です。住宅ローンを完済すると、「抵当権解除証書」とともにこの委任状が渡されます。


委任状には、以下の内容が記載されている必要があります。


  • 抵当権者(金融機関など)の名称・住所
  • 登記の申請を委任する旨
  • 代表者の署名または押印

この書類がないと、原則として抵当権抹消登記を申請できません。もし紛失した場合は、金融機関に相談し、再発行を依頼しましょう。ただし、場合によっては再発行がすぐにはできないこともあるため、慎重に管理することが重要です。


抵当権抹消登記申請書

これは、法務局へ提出する正式な申請書類で、登記を抹消するための基本情報が記載された書類です。


記載する主な内容は以下の通りです。


  • 申請者(不動産の所有者)の情報
  • 抵当権者(金融機関など)の情報
  • 対象となる不動産の情報(登記簿上の地番や家屋番号)
  • 抵当権抹消の原因(例:住宅ローンの完済)

この申請書は、法務局の公式サイトからダウンロードできます。また、記入に不安がある場合は、司法書士に依頼することも可能です。


金融機関などの資格証明書(必要な場合)

金融機関が抵当権者となっている場合、その金融機関が確かに実在し、登記手続きの権限を持つことを証明するために「資格証明書」が求められることがあります。


これは、特に法人が抵当権者となっている場合に必要で、銀行などの金融機関が発行する「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」が該当します。


ただし、平成27年11月以降は申請書に会社法人番号を記載すれば、資格証明証の添付は不要となりました。法人番号が判明していれば、資格証明証の提出は求められません。法人番号は国税庁のサイトから調べることが可能です。


ただし、法人番号が不明な場合は、これまで通り資格証明証が必要です。また、資格証明証の有効期限は発行してから3か月以内なので注意してください。


抵当権抹消登記の手続きと進め方

抵当権抹消登記を行うには、必要書類を準備し申請書を作成した上で法務局に提出する必要があります。


ここでは、手続きの流れを5つのステップに分けて詳しく解説します。


  1. 必要書類を揃えて準備を整える
  2. 抵当権抹消登記申請書の作成手順
  3. 書類の確認と提出のための整理
  4. 法務局へ申請を行う際の流れ
  5. 完了証を受け取り、登記完了を確認

必要書類を揃えて準備を整える

まずは、抵当権抹消登記に必要な書類を揃えることが最優先です。必要書類については前述していますが、改めて説明すると以下の書類が必要です。


  • 登記識別情報通知書または登記済証
  • 登記原因証明情報書類(抵当権解除証書・弁済証書)
  • 抵当権者の委任状
  • 抵当権抹消登記申請書
  • 金融機関などの資格証明書(必要な場合)

これらの書類のうち、特に「登記識別情報通知書」や「抵当権解除証書」などは原本が必要なため、コピーだけでなく、原本を確実に準備しましょう。


また、書類を紛失してしまった場合の対処法も事前に確認し、金融機関や法務局へ問い合わせる準備をしておくことが重要です。


抵当権抹消登記申請書の作成手順

次に、法務局へ提出する抵当権抹消登記申請書を作成します。この申請書は、記載内容に誤りがあると申請が受理されない可能性があるため、慎重に作成しましょう。


申請書には、以下の内容を記入します。

登記の目的 「抵当権抹消(順位〇番」と記載します。抹消したい順位は登記識別情報通知書などで確認できます。
原因 抵当権が消滅した理由と日付を記載します。
権利者 登記簿上の所有者の、氏名や住所を記載します。複数人で所有している場合は全員分の記載が必要です。
義務者 抵当権を設定している金融機関の情報(住所・社名・法人番号・代表者)を記載します。
添付情報 申請時に添付が必要な書類が記載されています。書類が準備できているかを確認しましょう。
登記識別情報(または登記済証)を提供することができない理由 もし登記識別情報が提出できない場合は、その理由を記載します。
申請年月日と申請する法務局 登記を申請する日付と、申請先の法務局を記載します。
申請人兼義務代理人 申請する人の情報を記載します。名前の横に認印が必要になります。
登録免許税 抹消手続きの際に納める税金です。現金納付をした場合は領収書、または収入印紙を添付します。
不動産の表示 申請する不動産の概要を、登記事項証明書にそって正確に記載します。

申請書は、法務局の公式サイトからダウンロードできます。また、法務局の窓口で相談することも可能なので、不明な点があれば事前に確認しておくと安心です。


誤った情報が記載されると、申請が却下される可能性があるため、作成後は再確認を行いましょう。


書類の確認と提出のための整理

提出する書類を整理し、提出に備えます。以下のチェックリストを確認しながら準備を進めましょう。


  • 必要書類が揃っているか
  • 申請書の記入漏れや誤記がないか
  • 原本とコピーを区別し、必要に応じてコピーを用意
  • 抵当権者(金融機関など)の押印が適切にあるか

法務局では、書類の事前確認を受けられることもあるため、不安な場合は提出前に相談することをおすすめします。特に、法人が抵当権者の場合、資格証明書の提出が必要になるケースがあるため、事前に確認しておくとスムーズです。


法務局へ申請を行う際の流れ

書類の準備が整ったら、法務局へ申請を行います。


  1. まずは提出先の確認をしましょう。申請を行う法務局は、不動産の所在地を管轄している法務局です。自分が住んでいる地域の法務局とは異なる場合があるため、注意しましょう。
  2. 登録免許税の納付をします。実際にいくら納付すればいいのか確認をして、間違えないように支払いましょう。支払った後は領収書か収入印紙を申請書類に添付します。
  3. 次に書類の提出方法を選びます。窓口に直接持ち込むか、郵送での提出になります。窓口に持ち込めば、その場で不備が確認できます。郵送する場合は不備がないように、しっかり確認してから郵送しましょう。
  4. 登記の受付が完了すると登記完了予定日が案内されます。実際にどのくらいで完了になるかを確認しましょう。

申請後の進捗状況については、法務局の窓口や電話で確認できます。万が一、不備がある場合は、追加の書類提出や修正が求められるため、迅速に対応しましょう。


完了証を受け取り、登記完了を確認

申請が無事に受理されると、「登記完了証」が発行されます。これは、抵当権抹消登記が正式に完了したことを証明する書類です。


登記完了証の受け取り方法は以下の2通りです。


  • 法務局の窓口で直接受け取る
  • 返信用封筒を用意し、郵送で受け取る

郵送で受け取る場合は、申請する際に、宛名を書いた返信用封筒と切手を同封しておきましょう。


また、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得することで、抵当権の記載が抹消されたことを確認できます。登記簿に「抵当権の抹消」の記載が反映されているかを最終確認し、必要に応じて証明書を保管しておきましょう。


抵当権抹消の内容については「抵当権抹消の登記費用はいくらかかる?自分でする方法や流れまで解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。

抵当権抹消登記は住宅ローンの完済後すぐに行うのがおすすめ

ここまで説明してきた通り、住宅ローンを完済しても、抵当権が自動的に消えるわけではなく、法務局で「抵当権抹消登記」の手続きを行わなければなりません。しかし、この手続きを後回しにしてしまう人も少なくありません。


売る予定がなかったり、忙しいからと後回しにするのは避けた方がいいです。


抵当権抹消登記を放置すると、不動産の売却や新たなローンの利用に支障をきたす可能性があります。また、必要書類を紛失してしまうと、手続きがより複雑になってしまうため、住宅ローンを完済したらすぐに抹消登記を行うことがおすすめです。ここでは、抵当権抹消登記を早めに行うべき3つの理由について解説します。


次の住宅ローンを組めない恐れがある

将来的に新しい住宅ローンを利用する可能性がある場合は、抵当権抹消登記を済ませることが必要です。抵当権が残ったままだと、審査に通らない可能性があるからです。


金融機関は、新たに住宅ローンを組む際、その人の信用情報だけでなく、担保となる不動産の状態も厳しくチェックします。もし抵当権が抹消されていないと、「この不動産にはまだ債務がある」と見なされ、ローンの審査に悪影響を及ぼす可能性があります。


特に、マイホームの買い替えを考えている人は、現在の住宅ローンを完済後、すぐに抵当権抹消登記を行わないと、次の物件購入に支障をきたすリスクがあるため注意が必要です。スムーズなローン審査を進めるためにも、完済後は速やかに手続きを行いましょう。


抵当権付き不動産は買い手がつきづらい

不動産の売却を検討している場合、抵当権が残っていると買い手がつきにくくなるため、抹消登記は早めに済ませておくべきです。


一般的に、不動産を購入する際、買い手側は登記簿謄本を確認し、抵当権の有無をチェックします。もし売却予定の物件に抵当権が残っていると、「この物件にはまだ借金が残っているのではないか?」と疑われ、買い手が敬遠するケースが少なくありません。


また、買い手がローンを利用して購入しようとする場合、金融機関は担保価値のある不動産かどうかを判断します。抵当権が抹消されていないと、「この不動産は担保として適切ではない」と判断され、買い手が住宅ローンを組めない可能性もあります。


不動産の売却はタイミングが重要であり、スムーズな売買を実現するためには、抵当権抹消登記を完了させておくことが不可欠です。売却の直前になって手続きをしようとすると、登記完了までに時間がかかるため、早めに準備しておきましょう。


書類を紛失する恐れがある

住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権解除証書や登記識別情報通知書が交付されますが、これらを放置すると紛失するリスクが高まります。


住宅ローン完済後すぐに抵当権抹消を行わず、いざ手続きしようとしたときに紛失しているというケースが少なくありません。これらの書類は再発行が難しく、場合によっては金融機関や法務局で別の証明手続きが必要になり、手続きがより煩雑になることがあります。


また、相続の際にも書類紛失が問題となることがあります。たとえば、親が住宅ローンを完済していたものの、抵当権抹消を行わずに亡くなってしまった場合、相続人が手続きを引き継ぐことになります。しかし、必要書類が見当たらないと、相続手続きと並行して抹消登記の手続きも進めなければならず、手間が倍増することになります。


こうしたリスクを回避するためにも、住宅ローン完済後は速やかに抹消登記を行い、書類の管理負担を減らしておくことが重要です。


不動産相続の内容については「家を相続する方へ-不動産を相続する際の必要手続きや書類・方法・費用を徹底解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


抵当権抹消登記に関するよくある質問

抵当権抹消登記には印鑑証明書や実印が求められるのか?

印鑑証明や実印はいりません。抵当権抹消登記の申請において、基本的には申請人(不動産の所有者)側の印鑑証明書や実印は不要です。申請は認印(シャチハタ以外)でも可能とされており、印鑑証明書を添付する必要はありません。


例外として、相続登記を伴うケースでは、相続人が申請する際に印鑑証明書が必要となる場合があるため、事前に法務局に確認しておくと安心です。


抵当権抹消登記の書類を紛失した場合、どうすればいい?

抵当権抹消登記を行う際に必要な書類を紛失してしまった場合、いくつかの対応策があります。


登記識別情報通知書または登記済証を紛失した場合、この書類は再発行ができないため、以下の方法で対応する必要があります。

「本人確認情報」を作成する 司法書士に依頼して本人確認書類を基に「本人確認情報」を作成・提出する方法。手数料が発生するため、コストがかかる点に注意です
「事前通知制度」を利用する 法務局から「事前通知」が送付され、その通知に記載された手続きを行うことで本人確認を済ませる方法です。ただし、通知が届いてから一定期間内に手続きを完了しないと無効になるため、注意が必要です。

抵当権解除証書や抵当権者の委任状を紛失した場合について、これらの書類は、住宅ローンを完済した際に金融機関から発行されるため、紛失した場合は金融機関に再発行を依頼する必要があります。ただし、場合によっては再発行が難しい場合もあるため、その場合は「登記原因証明情報」として代替書類を作成する必要があります。


いずれのケースでも、紛失が判明したら早めに法務局や専門家へ相談し、最適な対応策を検討しましょう。


抵当権抹消登記は自分でも簡単にできる?

抵当権抹消登記は、書類さえそろっていれば自分で手続きすることもできます。


住宅ローンの完済後に金融機関から送られてくる必要書類がすべて揃っている場合、法務局に申請するだけで比較的簡単に進めることができます。しかし、書類の記入ミスや不備があった際に、手続きが遅れたりする可能性があるため、不安な場合は専門家へ相談するほうがおすすめです。


特に相続が絡んでいるときなどは、より複雑な手続きが必要になるため注意しましょう。


自分で抵当権抹消を行う手続きの内容については「抵当権抹消手続きを自分で行う手順・流れを初心者でも分かりやすく解説!」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


抵当権抹消登記は早めに専門家へ相談を

住宅ローンを完済したら、できるだけ早く抵当権抹消登記を行うことが大切です。登記が残ったままだと、新たにローンを組む際の審査に影響が出たり、不動産を売るときに買い手がつきにくくなることがあります。また手続きを先延ばしにすると、必要な書類をなくしてしまい、余計な手間がかかることも。


この抵当権抹消登記は自分ですることもできますが、書類の記入ミスや不足があると上手く手続きができない場合があります。特に「書類を紛失している」「不動産の売却を検討している」といった人は、司法書士や専門家に相談するのがおすすめです。専門家に任せれば、必要な手続きを確実に進めてもらえるので安心できます。


早めに手続きを終わらせることで、不動産を自由に活用でき、将来的なトラブルも防げます。住宅ローンを完済したら、早めに抵当権抹消登記の手続きを進めましょう。

山田拓弥

記事監修

山田 拓弥

宅地建物取引士 相続診断士

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

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