公開日:2023年12月11日
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親の死後、相続した家が売れない原因とは?対策や放置するリスクも解説

親が亡くなったあと実家に誰も住まないのであれば、できるだけ早く売却することをおすすめします。家は徐々に劣化していくものなので、所有しているうちにみるみる価値が低下します。しかし、実家が古く、建物としての価値が低いと、売却は簡単ではありません。実家を処分したいのに売れないときはどうすれば良いのでしょうか。実家の処分に悩む人へ向けて、家が売れない理由と早く売却する方法などを紹介します。相続した親の家の売却を検討している方は「【完全ガイド】親の家を売る方法とは?後悔しないための準備・流れ・税金まで徹底解説」「相続した家を売るには?手続き・税金・売却方法までわかりやすく解説」にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

オープンハウスの買取事例

相続した家がなかなか売れない理由

相続した家を売りに出したものの、まったく売れる気配がないことがあります。


売れない理由にはいくつかあり、ときには複数の理由が重なり合って、ますます売れにくくなっている可能性も。なぜ相続した家が売れないのか、考えられる5つの理由を紹介します。


築年数が古い

築年数の古い家は市場で敬遠されがちな傾向があります。


建物は経年とともに劣化が進み、シロアリ被害や雨漏り、耐震性の不足など目に見えない欠陥が潜んでいる可能性が高くなります​。そのため買主は、購入後に大規模なリフォームや建て替えが必要になることを想定しなければならず、結果的に築古物件は選ばれにくくなるのです。


実際、ある調査では中古住宅購入希望者の約63%が「築10年以内が望ましい」と回答しており、築年数が新しい物件のほうが好まれる傾向にあります。また、築20年以上の物件になると、建物の評価額はほぼゼロと見なされ、土地の価値のみが重視されるケースも珍しくありません。


内覧時の印象が悪い


多くの人は、物件の購入を検討する際に内覧時の第一印象を非常に重視します。家財道具が乱雑に置かれていたり、汚れやニオイが残っていたりする物件は、購買意欲を大きく損ね、結果的に売れ残りにつながることがあります​。


特に、相続して間もない物件では、故人の遺品がそのまま残っているケースもありますが、これはあまり良い印象を与えません。できる限り整理・清掃し、すっきりとした状態にしておくことが望ましいです。


また、適切な清掃や不要品の処分に加えて、可能であれば最低限のリフォームを行い、見た目や機能性を改善することで、内覧時の印象が大きく向上し、売却できる可能性も高まります。


立地条件が悪い

立地や周辺環境の利便性が良くない物件は需要が低く、売れ残る可能性が高くなります。


たとえば

  • 駅から遠い
  • 近隣に買物施設や病院がない
  • 主要道路沿いで騒音が大きい
  • 洪水など災害リスクが高い

といった不便・不安要素があると、需要が下がってしまいます​。国交省の調査でも、中古戸建購入者が物件を選ぶ理由として、利便性(駅距離や周辺環境)を重視する傾向が示されています​。


立地の悪さは買い手がつきにくいだけでなく、売れたとしても相場より低価格になりがちです​。


売主の希望価格が高すぎる

不動産売買ではある程度の値引き交渉があるため、売り出し価格を市場価格より少し高くすることがあります。しかし、市場価格に見合わないほどの高値で売り出してしまうとなかなか売れません。


購入希望者は周辺の類似物件相場を参考に予算を組むので、相場とかけ離れた価格では内覧すらしてもらえないのです。実際に、「価格が適切だったから購入した」という中古住宅買主は61.7%にも上るというデータもあり、価格設定の妥当性は極めて重要です​。


売却開始後半年以上売れない場合、思い切った値下げや再査定による価格見直しが必要でしょう。


家の相続に関する手続きや注意点は「 家を相続する方へ-不動産を相続する際の必要手続きや書類・方法・費用を徹底解説」にて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。


再建築不可物件で建て替えられない

相続した実家が再建築不可物件で建て替えられない場合も、購入希望者がほとんど現れない可能性があります。


再建築不可物件とは、現在建っている物件を解体して更地にしても、新たな家を建てられない土地のことで、都市計画区域と準都市計画区域内だけにあります。


たとえば、幅員4m未満の道路にしか接しておらず法律上建替えができない土地は、古家付きであっても新築を建てられないため需要が極端に低くなりがちです​。このような土地は、実質的に土地としての流動性も低く、不動産会社から買取すら断られる場合があります。


売れない家(空き家)を放置するリスクとは

近年では空き家が社会問題となっており、売れないからと放置することも難しい状況です。そもそも、空き家を管理せずに放置すると、さまざまなリスクが生じます。


ここでは、売れない家を放置するリスクについて解説します。


老朽化が進むほど、修繕・解体費用が高くなる

建物は、人が住んでいない期間が長くなるほど劣化のスピードが早まります​。定期的な換気や清掃がない空き家は、湿気やホコリによってカビが発生しやすく、強風や地震によるダメージも蓄積されます。


さらに、水道管は水を流さないと臭気が上がりやすくなり、木部は乾燥と湿気を繰り返すことで脆くなっていきます。


その結果、数年放置するだけで修繕が難しいほど老朽化が進み、最終的には解体せざるを得ないケースも少なくありません。


また、老朽化が著しい場合は、解体工事にも追加のコストが発生します。倒壊のリスクがある建物は慎重な作業が必要になり、アスベストの除去など安全対策費用が別途かかることもあります。

治安・景観が悪化し周辺住民とのトラブルを招く可能性がある

人の住んでいない空き家は地域の治安・景観面でもマイナスです。


誰も住んでいない家は、放火など犯罪の標的になりやすく、不審者に勝手に侵入・占拠される恐れもあります​。近隣で火災が発生した際も空き家だと初期対応が遅れ、延焼被害が拡大するリスクがあります​。


放置空き家は地域全体の防災・防犯上の弱点となり、周辺の治安悪化につながりかねません​。


また、外観がボロボロの家屋が放置されていると景観を著しく損ね、周囲の住環境の価値も下げてしまいます​。庭木の枝が隣地にはみ出したり敷地内にゴミが散乱するなど周辺に迷惑を及ぼすと、近隣住民から苦情・トラブルに発展することも。


空き家を放置することは単に買い手が付かないだけでなく、地域社会にも悪影響を及ぼす点に注意が必要です。


固定資産税・管理費用が毎年かかる

空き家であっても所有している限り、毎年の固定資産税は課税されます。固定資産税は土地建物の評価額に対し年1.4%、都市計画区域内にある土地や物件の場合は、都市計画税も0.3%課税され​、これらは住んでいなくても免除されません。


実家を相続しただ持っているだけで、毎年税金や維持費の負担が発生し、定期的な掃除・見回りの手間も増えます​。 庭の草木の手入れや建物の簡易な補修など、最低限の管理にも費用がかかるのです。


誰も住まなくとも電気や水道の基本料金を払い、換気するケースもあります。こうした固定費用を垂れ流しにしていると、売れない期間が長引くほど経済的損失が積み重なります。

「空き家認定」を受けると、増税される可能性がある

長期間放置された結果、行政から問題視されるレベルになると「特定空き家」や「管理不全空き家」など、空き家認定される場合があります。


「特定空き家」とは、

  • 放置すれば倒壊などの危険がある
  • 著しく衛生上有害となる恐れがある
  • 著しく景観を損なっている

などの要件に該当する空き家で、自治体が調査のうえ認定します​。


さらに、2023年の法改正で創設された「管理不全空き家」も含め、行政から改善勧告を受けた空き家は、住宅用地特例の対象外となります​。


住宅が建っている土地は本来、固定資産税が更地の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されますが、「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されるとこの軽減措置が外され、固定資産税が最大6倍にも跳ね上がってしまうのです​。


実質的な増税によって維持費が大幅に増えるため、空き家を放置し続けるデメリットが一層大きくなります。


行政代執行により強制撤去される可能性がある

「特定空き家」や「管理不全空き家」などに指定され、行政から是正指導・命令が出ても従わない場合、最終手段として行政代執行(自治体が強制的に解体・撤去)になる可能性があります。行政代執行が行われると、自治体が業者に依頼して建物を取り壊し、費用は全額所有者に請求されます​。


しかも、行政が行う解体は緊急性を要するため、業者選定も入札ではなく信頼性重視となり割高なケースが多いです。その結果、行政代執行の費用は自分で解体するより高額になる傾向があります​。


請求された費用を支払えないと、所有者の財産や給与が差し押さえられる可能性もあります​。自治体によっては所有者氏名の公表に踏み切る事例もあり、社会的信用も失いかねません​。


最悪の場合、法的強制措置と多額の負担が待っているため「売れないから放置」は非常に危険な選択なのです。


空き家を放置することは時間経過とともにデメリットが雪だるま式に増えていきます。「そのうち景気が良くなれば...」と悠長に構えていると状況は悪化する一方なので、早めに対応策を講じることが肝要です。


親の死後、実家(空き家)が売れない場合に見直したい4つのポイント

親から相続した実家がなかなか売れないときは、ここで紹介するポイントを見直してみましょう。状況を改善することで売却につながる可能性があります。


すべての人が利用できる方法ではありませんが、試しやすい方法から検討してみましょう。

①家の状態を確認し、必要に応じて改善する

まずは家の現状をチェックし、買い手に敬遠される要素を取り除く努力が必要です。室内外を点検して、雨漏り跡や床の沈み、害虫の痕跡などの明らかな不具合があれば、修繕を検討しましょう。


ハウスクリーニングや不用品の撤去で清潔感を高め、好印象を与える工夫も重要です​。可能であれば、部分的にでもリフォームもすることで、売れ行きを改善する助けになります。


外壁の補修や壁紙の貼り替え、水回り設備の新調など、購入希望者が気にしそうな点を修繕すると、古い家でも「そのまま住めそう」と感じてもらいやすくなります。


ただし、闇雲に高額なリフォームをするのは禁物です​。投下した費用分を価格に上乗せしても回収できるとは限らず、かえって割高な印象を与える恐れもあります。


リフォームは必要最低限にして、費用対効果を考慮した改修にとどめましょう。また、どこまで直すべきか悩む場合は不動産会社に相談し、現状のままで売るメリット・デメリットを確認すると良いでしょう。

②家の売却価格を見直す

家がなかなか売れない場合は、価格設定の見直しも大切です。多くの買主は、物件選びにおいて「価格」を重視しています。


実際、中古戸建を購入した人の過半数が「価格が適切だったから購入を決めた」と回答しており、価格が合えば購入に踏み切る潜在顧客が一定数いることが分かります。


まずは、不動産会社に再査定を依頼し、現在の市場相場に対する自身の物件の適正価格を把握しましょう。その上で、思い切った値下げを検討することも必要です​。


たとえば、当初の希望額から〇%値下げする、あるいは端数を切りの良い数字にして印象を良くするといった方法で、価格面での魅力を高めることができます。ただし、一度値下げした価格をあとで引き上げることは難しいため、値下げ幅は不動産会社の担当者と慎重に協議して決めましょう​。


適正な価格まで見直せば、それまで反応がなかった層からも新たな問い合わせが来る可能性があります。

③不動産会社を見直す

現在依頼している業者が熱心に動いてくれなかったり、販売戦略に疑問を感じたりする場合は、思い切って他社に切り替えるのも一つの選択肢です​。


不動産会社には、それぞれ得意な分野や顧客層があります。たとえば、実家のあるエリアでの販売実績が乏しい業者よりも、その地域で実績豊富な業者に依頼したほうが、的確なアドバイスや効果的な販促活動が期待できます。


また、「囲い込み営業」にも注意が必要です。これは、自社で買主を見つけようとするあまり、他社に物件情報を公開しない営業手法のことで、情報が市場に行き渡らず、売却の機会を逃してしまう原因になります。


信頼できる会社を見極めるためにも、現在の業者との媒介契約が満了し、更新のタイミングを迎えた際に、複数の不動産会社に査定を依頼して比較することをおすすめします​。

④空き家バンクなどで販路を広げる

空き家バンクとは自治体運営のマッチングサイトで、空き家を売りたい人が物件情報を登録し、田舎暮らし希望者にPRできる仕組みです​。登録・掲載は無料で行え、自治体のWebサイト上で物件情報が公開されます​。


空き家バンクへ登録すると、自力では見つけられなかった遠方の潜在的な買い手にアプローチできるのがうれしい点です。


ただし、空き家バンクは全国で見ても登録物件数が少なく(2023年8月時点で12,607戸、全国の空き家総数のわずか0.14%​)、登録したからといってすぐ買い手が見つかるわけではありません。素人同士の直接交渉では契約トラブルの恐れも指摘されています。


空き家バンクは売却チャネルの一つと捉え、通常の不動産流通と並行して活用するのが良いでしょう。


自治体運営以外にも、個人間売買を仲介する民間の空き家マッチングサイトがあり、古民家や訳アリ物件を積極的に探しているユーザーに直接訴求できます​。複数の販路を駆使し露出を最大化することで、「買いたい」人に出会える確率を高めましょう。

売却以外に売れない家(空き家)を活用する方法

家の買い手がどうしても見つからない場合は、無理に安値で手放す前に、売却以外の活用策を検討するのも一案です。ここでは、親の家を有効活用し、資産価値を生かす方法をいくつか紹介します。


賃貸として収益化する

売れない家を賃貸物件として貸し出すことで、毎月家賃収入を得られます。入居者が付けば、固定資産税など維持コストを家賃でまかなえるのが利点です​。


空き家バンクでは、売買だけでなく賃貸募集も可能で、自治体の補助金と組み合わせて改修し貸し出す事例もあります​。


賃貸活用する際は、物件の需要と改装コストを見極めることが重要です。駅から少々遠い田舎の家でも、月数万円程度の格安賃貸なら借り手が付く可能性があります。


貸し出す場合、自身が大家となって管理するか、不動産管理会社に委託するかを決めなくてはなりません。大家になる場合は、入居者対応や建物維持の手間はかかりますが、その分高い家賃収入が見込めます。


売れない家を貸し出すことは、将来的に不動産市況が好転した際に売却するまでのつなぎの活用策としても有効でしょう。


セカンドハウス・親族で利用する

自分や家族でセカンドハウス(別荘)として利用する方法もあります。普段の住まいとは別に、週末や休暇に滞在する拠点として活用すれば、空き家を有効利用できるでしょう。


また、親族が利用したい意思があるなら話し合ってみる価値があります。兄弟の誰かが住み替えや二世帯住宅を検討している場合、相続した実家を活用できるかもしれません。


親族間で賃貸という形にして、格安で借りてもらう方法もあります。身内に貸す場合でも契約やルールは明確にしてトラブル防止が必要ですが、他人に貸すより心理的ハードルは低いでしょう。


自分自身が将来田舎暮らしをしたい、老後に戻りたいと考える場合も、売却を急がず維持しておく選択もあります。その際も放置せず適切に管理し、必要最低限の修繕は行っておくことが大切です。


地域コミュニティや自治体に活用してもらう

空き家を地元のコミュニティスペースや公共施設として転用する道もあります


近年、過疎化地域などでNPO法人が中心となり、空き家をリノベーションして地域の集会所やサテライトオフィス、移住者の体験住宅などに活用する事例が増えています​。たとえば、古民家をカフェや子どもの学習施設に改装すれば、地域の憩いの場となりコミュニティ活性化に貢献できます​。


自治体によっては空き家活用のアイデアを募集し、補助金を出して地域施設として再生させているケースもあります​。もし、家が歴史的価値のある建物なら、町おこしの観光拠点(民泊や資料館など)に使われる可能性もあるでしょう​。


所有者が了承すれば、自治体が借り上げて運営してくれることも考えられます。いずれの場合も所有者としての責任(管理や費用負担)は伴いますが、視点を変えれば「家を活かす」道は開けるかもしれません。

どうしても親の家(空き家)が売れない場合の処分方法

ここまでで紹介した方法を試しても実家の売却が難しい場合、最終的には手放すための別の方法を検討する必要があります。売れない家の処分方法として考えられる、主な選択肢を解説します。

不動産買取業者に買い取ってもらう

不動産買取業者(買取専門の会社や不動産仲介会社の買取部門)に物件を買い取ってもらうことで、スピーディーに現金化することが可能です。


売却活動や内覧対応が不要で、提示された金額に合意すればすぐに売買契約へ進める手軽さが大きな魅力です。実家が遠方にあって頻繁に現地対応できない場合や、早期に確実に売却したいケースに特に適しています。


また、多くの業者が無料で不動産査定を行っているため、まずは自身が保有する物件の価値を把握したい場合にも気軽に活用できます。

家を解体し、土地のみ売却する

老朽化が進み建物に価値がない場合は、家を解体して更地にし、土地のみを売却した方が買い手にとって魅力的になることがあります。


古家付きのままだと、買主が解体費用や手間を負担しなければならず敬遠されがちですが、更地であれば自由に活用でき、購入のハードルが下がります。


家の解体し、土地のみを売却するには、まず解体業者に見積りを取り解体コストを確認しましょう。木造住宅の解体費用は坪あたり3~5万円程度が相場ですが、建物の大きさや構造、アスベストの有無によって増減します。



注意点として、解体後に更地になると、固定資産税の軽減措置(住宅用地特例)が適用されなくなるため、売れるまでの間の税負担が増加する可能性があります。


ただし、そのようなデメリットを踏まえても、早期売却につながるメリットが大きい場合は、解体を前向きに検討する価値があります。特に築20年以上で建物の資産価値がほぼゼロに近い場合は、維持管理にかかる費用を解体費に充て、更地にすることで売却しやすくなる可能性が高まります。

自治体に寄付する

不要になった実家を自治体に寄付するという選択肢もあります。


かつては、土地を無償提供すれば市町村が引き取ってくれるケースも見られましたが、近年では自治体の財政負担が大きくなっていることから、無条件で不動産を受け入れる例は少なくなっています。


特に、利用価値の低い郊外の住宅地などを「いらないから」と寄付しようとしても、多くの場合は断られてしまうのが現実です。


仮に寄付を検討する場合でも、建物を解体して更地にしておくことや、境界トラブルを解決しておくことなど、受け取り側が負担なく引き取れるように一定の条件整備が求められます。


自治体に断られた場合は、他の選択肢として公的機関や社会福祉法人への寄付を検討することも可能ですが、こちらも受け取り側にとっての明確なメリットがなければ成立しません。


いずれにせよ、「管理や税負担から逃れたい」という理由だけでは、どの団体も容易には受け取ってくれないのが実情です。

国へ引き渡す(相続土地国庫帰属制度)

2023年4月に開始された「相続土地国庫帰属制度」を利用することで、相続した土地を一定の条件のもとで国に引き渡すことが可能です。この制度は、不要な土地について所有権を法務局経由で国庫に帰属させることができる仕組みで、承認されるとその後の管理責任や固定資産税の負担から解放されます。


ただし、対象となるのは土地のみで、建物がある場合は事前に解体し、更地にしておく必要があります。


また、引き渡しには厳格な条件があり、たとえば以下のような制約があります。

  • 土地の管理や処分に過大な費用がかからないこと
  • 地上権や賃借権などの第三者の権利が設定されていないこと
  • 境界トラブルなどがなく、明確に区画が確定していること

条件をすべて満たし、申請が認められた場合は、「負担金(原則1筆あたり20万円)」を納めることで手続きが完了します。この負担金は、国が当該土地を10年間管理するための想定コストに相当するものです。


制度開始以降、申請件数は4,600件を超えていますが、実際に承認されたのは全体の約3割にとどまっており、残りの約7割は却下・取下げ・審査中という状況です。


つまり、「誰でも簡単に土地を国に引き取ってもらえる制度」ではない点に注意が必要です。

売れない家(空き家)の維持にかかる主な税金

空き家やその敷地を所有・処分するにあたり、知っておきたい税金を整理します。

固定資産税

固定資産税は、不動産(土地・建物)の所有者に対して毎年課される税金で、標準税率は固定資産税評価額の1.4%です。


空き家が老朽化し、「特定空家等」や「管理不全空家」に指定され、自治体から勧告を受けた場合、固定資産税が通常の最大6倍に増額されることがあります。そのため、適切な管理を怠った空き家は、税負担が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。


さらに近年では、自治体独自の「空き家税(非居住住宅税)」の導入も進んでいます。たとえば京都市では、居住実態のない住宅に対して課税する「非居住住宅利活用促進税」を2029年度から導入予定です


この制度では、約15,000件の空き家や別荘を対象に年間9.5億円の税収を見込んでおり、空き家の活用を促す強力な施策として注目されています。


東京都23区でも類似の制度が検討されており、今後は空き家への課税強化が全国的に広がっていく可能性があります。


都市計画税

都市計画税は、市街化区域内の土地や建物に課される地方税で、標準税率は固定資産税評価額の0.3%です。通常は固定資産税と合わせて課税され、同じ納付書で支払う形式が一般的です。


この都市計画税も、住宅用地特例の対象であれば軽減されますが、空き家が「特定空家等」に指定されると特例が適用されなくなり、税額が増える点に注意が必要です。


具体的には、勧告を受けた翌年から、都市計画税が最大で3倍に増額される可能性があります。


売れない家(空き家)の解体・活用に利用できる補助金や支援制度

老朽空き家を解体・活用する場合、国や自治体からの補助金・支援制度を受けられることがあります。


ここでは、代表的な制度を紹介します。自治体ごとに名称や条件が異なるため、詳しくは各市区町村へご確認ください。


老朽危険家屋解体撤去補助金

「老朽危険家屋解体撤去補助金」は、老朽化が進み倒壊の恐れがある空き家を解体する際に、その費用の一部を自治体が補助してくれる制度です。この制度は、危険な空き家の除却を促進し、地域の安全を確保することを目的として設けられています。


多くの自治体では、事前に空き家の危険度について認定調査や耐震診断を受ける必要があります​。補助金額は自治体によって異なりますが、解体費用の20%〜50%(上限おおむね100万円)を補助するケースが一般的です​。


自治体ごとに申請条件や対象範囲もそれぞれ異なり、補助を受けるには事前申請と承認が必要です。


解体後には、領収書の提出や現地確認などを経て補助金が交付されます。なお、この補助金制度には予算枠や申請期限が設けられており、先着順で締め切られるケースもあるため、早めの確認と申請がおすすめです。


都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金

一部の自治体では、景観対策を目的とした空き家解体の補助制度を設けています。都市部では「都市景観形成地域老朽空き家解体事業補助金」などの名称で運用されており、景観形成重点地区などに長年放置された空き家の解体を対象としています。


この制度は、地域の美観向上と安全確保を目的としており、補助率は解体費用の20〜50%程度が一般的です。


大きな特徴は、解体後の土地利用についても景観への配慮が求められる点です。たとえば、解体後に駐車場として活用する場合でも、街並みに調和した塀や植栽などの設置計画を提出する必要があります。


つまり、単に空き家を撤去するだけでなく、その後の活用方法まで含めて審査される制度となっています。


観光地や景観保全地区などに相続した実家がある場合には、このような補助制度を活用することで解体費用の負担を軽減できるだけでなく、地域への貢献にもつながります。


空き家解体撤去補助金

老朽危険家屋に限らず、一定の空き家なら解体に補助を出す自治体もあります。


ここでは仮に「空き家解体撤去助成金」と呼びます。これは老朽度合いがそれほどでなくても、空き家対策の一環で解体費用を助成するものです​。


要件や補助額は自治体によってさまざまで、たとえば「1年以上利用実績のない空き家であること」「1981年以前の旧耐震基準の家屋であること」などが条件に含まれることが多いです​。補助額は一般的に、上限100万円が目安です​。


「空き家解体撤去助成金」は、予算が無くなり次第終了となる場合もあります。 助成金を利用するには、事前に申請期限や必要書類を確認し、早めに動くことが大切です。


補助金は後払いが基本で、工事完了後に請求手続きを経て交付されます​。自治体のWebサイトや広報紙で告知されているので、自分の空き家が条件に該当しそうなら問い合わせてみましょう。


家の処分に関するよくある質問

最後に、親から相続した家の処分について、多くの人が疑問に思うであろうポイントをQ&A形式で解説します。


売れなかった家は最終的にどうなるのでしょうか?

基本的に、売れない限りはずっとあなたの所有物です。自分で所有し続ける限り、固定資産税の支払い義務や管理責任も続きます​。


不動産は、買い手が付かないからといって放置すれば、先述したような税金負担や管理リスクを延々と抱えることになります。


実家の家を相続した場合、必ず住まなければならないのでしょうか?

法律上、相続した家に必ず住まなければいけないという義務はありません。相続した不動産をどう利用するかは、所有者の自由です。ただし、住まない場合でも、相続登記や管理、税金の支払いなど、やるべきことはいくつかあります。


管理とは、具体的には定期的な換気や清掃、庭木の剪定、雨漏り・破損の修繕などを指します。これらの管理を怠って建物が荒廃すると、「特定空家」に指定され、固定資産税の優遇措置が受けられなくなったり、最悪の場合は行政代執行を受けたりするリスクもあります。


また、税金については固定資産税や都市計画税が課されます。これらを滞納すると、最悪の場合は財産を差し押さえられる可能性があるため、忘れずに納付しましょう。


親が認知症でも家を売却できるのでしょうか?

原則として、認知症などにより意思能力を失った親本人が、不動産の売買契約を結ぶことはできません。


不動産の売買契約には、契約当事者の「意思能力」が必要とされます。そのため、認知症などで判断能力が不十分な状態のまま契約を進めた場合、契約が無効となる可能性があります。


このような場合には、成年後見制度の利用が選択肢となります。成年後見人に選任された人は、家庭裁判所の許可を得たうえで、親の代理として不動産売却の契約を結ぶことが可能です。


認知症の親が所有する不動産の売却については「認知症の親が所有する不動産を売却する方法とは?手順から注意点まで解説」にて詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。


相続した家(空き家)がなかなか売れなくても放置は避けよう

親の死後、相続した実家が売れない理由には、築年数の古さや立地条件の悪さ、再建築不可物件といったさまざまな要因があげられます。売却できないまま放置すれば、固定資産税や管理コストの負担、特定空家指定による増税、さらには行政代執行のリスクまで生じるため早期の対応が不可欠です。


家が売れないときは、まずは物件の状態を確認し、必要であれば修繕して価格を見直しましょう。現在契約している不動産会社の販売戦略に疑問がある場合は、思い切ってほかの不動産会社へ乗り換えや不動産買取を検討してみましょう。


それでも家が売れない場合は、賃貸活用や自治体・国への引き渡しなど、処分・活用の選択肢も視野に入れることが大切です。


山田拓弥

記事監修

山田 拓弥

宅地建物取引士 相続診断士

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

小中高と新潟で過ごし、大学入学と共に上京。大学卒業後は大手アパート建設メーカーに入社、営業職として従事し当時最年少で課長に昇進。
5年間アパートメーカーに勤めた後、2017年オープンハウス・ディベロップメントへ転職、お客様からの不動産買取や売却相談に対応している。税制や相続に関連した相談などへの細かい対応を得意とする不動産買取のスペシャリスト。

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